個人的にも交流が深い大阪の店を訪れた松尾さん。いつものメニューではなく、今回は初めてシーフードカレーをチョイス。さてそのお味とは――。
下北沢「般°若(パンニャ)」に大阪福島店があった頃、何度か催した、こちらの「谷口カレー」と「旧ヤム邸」三者のコラボレーションイベント「谷ヤムパンニャ」では、店主の谷口さんはひとかたならぬお世話になった恩人でもある。
普段はチキンカレーをいただくことが多く、たまに麻辣豚バラキーマカレーにするのだけれど、今回はシーフードカレーを初めて注文してみた。
硬めのターメリックライスが谷口カレーのグレイビーに絡むと、えも言えぬ幸せが訪れる。フライドオニオンが香ばしく、青ネギのアクセントもきいている。花椒の香り爽やかな麻辣豚バラキーマカレーにはいつも何も聞かされているわけではないのに食べながら「うん、うん」と頷かされる。もちろん、オーソドックスにチキンを頼んだ時も同様なのだけれど。豆腐、しめじ、カボチャ、大根などの滋味が広がって来て、感謝するばかりだ。食材の高騰や、酷暑の夏にまさかの閑散なども乗り越えて、続けてくれてありがとう。
さて、缶チューハイをいただきつつ、店内で順番を待っている人たちや店主の谷口さん、アルバイトのスタッフの様子を眺めながら待つこと数分、しずしずと運ばれて来た初めてのシーフードカレーは、イカ、タコ、エビ、アサリなどの具材が小ぶりに処理されているのでカレーの絡み方が絶妙なのだ。イカなど、こんなに包丁を入れるのはさぞ手間だろうと思うけれど、1日10食限定なのは頷ける。「うん、うん」。
大根や紫キャベツのピクルスアチャールがまたいいコンビネーションで、ちょっとだけ添えられているハリッサもいい匙休めになる。
お察しなのはわかっていてあえて言うが、とにかく美味い。この近くにあるもうひとつの名店「カシミール」同様、大阪名物「あいがけ」がないのは、これだけで十分うまいという信念、潔さだと思われる。
店内の雰囲気を見ても、どれだけ愛されている店かということがわかろうというものだろう。
ちなみに、今回働いていたアルバイトの方は映画館の映写技師さんで、ランチ営業が終わったら職場に駆けつけるそうだ。
文・撮影:松尾貴史