いま「食」を語る。~編集長・植野が「食」の達人にインタビュー~
命を全うさせた時、未知の感動に巡り合えるのです。|ELEZO 佐々木章太さん Chapter2 目指すもの

命を全うさせた時、未知の感動に巡り合えるのです。|ELEZO 佐々木章太さん Chapter2 目指すもの

“食肉料理人集団”ELEZO(エレゾ)は、狩猟によるジビエを扱うほか、豚などの放牧飼育も行っています。例えば、通常の生産者であれば半年程度で出荷する豚は、自然な餌を与えながら急な坂道で放牧し、1年半育てます。なぜ、そうしたことをするのか。佐々木章太さんの思いと目指すものを聞きました。

生き物が美味しくなるメカニズムをジビエから学びたかった

「経済効率だけを考えて飼育期間を区切ることはおかしいと思ったんです。自然な環境でしっかり育てていると、筋繊維が発達し、豚ってこんなに美味しいんだ、と感じられるまで成長する時期があるんです。それを出すのが自然ではないかと」
佐々木さんは放牧豚の育て方についてこう言います。
狩猟したジビエを扱うことで、野生の動物が美味しくなるメカニズムをそこから学びたかったとも。そうして育てた豚は美味しい、を超越したパワーを感じます。食べただけでストーリーを感じる肉。しかし、それが本来の肉なのではないか、ということに気づかされます。

「命を全うさせた時、未知の感動に巡り合えるのです」という佐々木さんが目指すものとは――。

語る人

佐々木章太さん

ささき・しょうた●1981年、北海道・帯広生まれ。東京・西麻布「ビストロ・ド・ラ・シテ」などで経験を積み、2005年に食肉の自社一気通貫型モデルを確立するため「ELEZO(エレゾ)」を設立。ジビエの狩猟、家畜家禽の生産、それらの肉食材で熟成流通、加工製造、レストラン運営の4部門構成で独自の展開を構築する。十勝のエレゾ・ファームでジビエの狩猟や放牧豚などの飼育を行い、全国各地の信頼するレストランに精肉卸すほか、シャルキュトリ製造にも定評が高い。飲食でも東京・虎ノ門のエントリーモデルとして位置付ける「エレゾゲート」で料理を提供。2022年には十勝にオーベルジュ「エレゾ・エスプリ」をオープン。ジビエや畜肉の熟成流通や加工製造における従来の“常識”を覆し、スタート当初より生産から飲食までの一貫した理想の体制を描き、それを着実に実行している。多彩なスタッフをまとめあげる兄貴分的存在の佐々木さんは、熱い思いを抱きつつ、冷静に計画をこなすリーダーである一方、ロマンチストであり、おちゃめな人でもある。