アサリの語源は「漁る」「浅砂利」。各地の貝塚を見れば、日本各地の海岸でアサリが大量に獲られ、食されてきたのは間違いない。アサリは潮干狩りで食べられるものだったし、昭和50年代の多い年は160,000トンの水揚げがあったのも事実。今ではその3%以下だ。数年後、国産の上質なアサリは幻の美味になるかもしれない。
海水温の上昇や記録的豪雨の多発による、海の貧酸素水塊の発生は、比較的浅い海が生息地の二枚貝には大きなダメージとなっている。また、下水処理場の普及、工場排水規制、農業・畜産業の水質汚染対策が、海の低栄養化(植物プランクトンの減少)に繋がったなど、様々な原因がアサリなどの水産資源減少に繋がっている。
特に、水深が浅く、閉鎖性海域の伊勢湾では問題は深刻だ。
様々な原因がある中、伊勢湾では稚貝の移動放流、漁場耕耘、ツメタガイ駆除、出漁調整、日あたり漁獲量制限などを行い、アサリ資源の回復に取り組んでいる。
大きな成果を上げた三河湾のアサリ漁復活の実例もあり、資源の復活が期待される。
今回案内するアサリは5月〜7月の最も身が肥えている時期のもの。それも沖獲りの栄養状態の良好な海域に限定している。身の成長に殻の成長が追いつかず、殻が薄く割れるものもあるが、それは身入りの良い証。鈴鹿の競り場から運ばれたアサリは、マルゴ水産の専用設備で選別と養生(漁や競りで弱った貝を元気にする)と砂抜きが施される。地下32mから汲み上げた地下海水がアサリを元気に復活させる。
プランクトン豊富でありながら細菌や泥が少ない海水で、大粒アサリの味は洗練される。今回は仕上げの砂抜き用の地下海水を、アサリと一緒にお届けする特別企画。
文:(株)食文化 萩原章史