かつ丼はとんかつ、だし、卵の三位一体が醍醐味。とはいえ、だしで煮て卵でとじることで、とんかつのさくっとした香ばしさは失われがちです。しかし、サクサクとふわふわがきっちり両立したかつ丼に出会いました。
かつ丼は、とんかつをだしで煮て味を染み込ませ、卵でとじてまろやかに全体を融合させてご飯にのせます。濃い目のだしとご飯が相まって、みんな大好きな丼です。しかし、さくっと揚げたとんかつの香りや食感が失われることが前提の料理でもあります。かつ丼はとんかつとは別物の料理なので、それは仕方ない。仕方ないけれど、やはりとんかつの香ばしさも一緒に味わいたい……ということで、ご飯のうえにふわっとだしで煮た卵をのせ、そのうえにとんかつをのせるスタイルのかつ丼が流行っています。
もちろん、これも美味しいのですが、これは逆にとんかつの香ばしさが立ってしまって、かつ丼らしい一体感に欠ける感じがしていまいます。
かつ丼におけるサクサクとふわふわのバランス問題は非常に難しいのですが、ついに、それが両立する一品に出会いました。東京・水天宮前のビルの2階にひっそり佇むかつ丼専門店「さくり」のロースかつ丼です。こちらのかつ丼は卵でとじたとんかつをご飯にのせる定番スタイル。ただし、強めにしっかり揚げ切った分厚いとんかつは卵でとじられてもさくっとした香ばしさがしっかり残っています。特に、とんかつの両端はとじてないので、サクサク感が味わえます。濃厚で上質なだしを吸った半熟状の卵もとんかつの強い旨味と程よくなじんでご飯を誘います。
実はこの店、近くの人形町のとんかつ店「かつ好」が出したとんかつ専門店なのです。「かつ好」のとんかつもバランスよく揚げ切った美味しさがありますが、それをかつ丼に応用するには、さらに強い揚げ方をする必要があったのだと納得しました(ちなみに「さくり」の1階には同系列の和食店「七灯舎」もあります。そのためか「さくり」のかつ丼には上質で濃厚なだしが効いたお椀と爽やかな味わいのドレッシングで和えた千切りキャベツがつきます)。
不可能かと思っていた(?)かつ丼のバランス問題。組み合わせ方を変えたりするのではなく、強くしっかり揚げ切ったとんかつに旨味の深いだしと卵を組み合わせれば、定番のスタイルでも両立することがわかりました。
やはり、料理は王道を極めることが大切なのでしょうね。
文・写真:植野広生
かつ丼は、とんかつをだしで煮て味を染み込ませ、卵でとじてまろやかに全体を融合させてご飯にのせます。濃い目のだしとご飯が相まって、みんな大好きな丼です。しかし、さくっと揚げたとんかつの香りや食感が失われることが前提の料理でもあります。かつ丼はとんかつとは別物の料理なので、それは仕方ない。仕方ないけれど、やはりとんかつの香ばしさも一緒に味わいたい……ということで、ご飯のうえにふわっとだしで煮た卵をのせ、そのうえにとんかつをのせるスタイルのかつ丼が流行っています。
もちろん、これも美味しいのですが、これは逆にとんかつの香ばしさが立ってしまって、かつ丼らしい一体感に欠ける感じがしていまいます。
かつ丼におけるサクサクとふわふわのバランス問題は非常に難しいのですが、ついに、それが両立する一品に出会いました。東京・水天宮前のビルの2階にひっそり佇むかつ丼専門店「さくり」のロースかつ丼です。こちらのかつ丼は卵でとじたとんかつをご飯にのせる定番スタイル。ただし、強めにしっかり揚げ切った分厚いとんかつは卵でとじられてもさくっとした香ばしさがしっかり残っています。特に、とんかつの両端はとじてないので、サクサク感が味わえます。濃厚で上質なだしを吸った半熟状の卵もとんかつの強い旨味と程よくなじんでご飯を誘います。
実はこの店、近くの人形町のとんかつ店「かつ好」が出したとんかつ専門店なのです。「かつ好」のとんかつもバランスよく揚げ切った美味しさがありますが、それをかつ丼に応用するには、さらに強い揚げ方をする必要があったのだと納得しました(ちなみに「さくり」の1階には同系列の和食店「七灯舎」もあります。そのためか「さくり」のかつ丼には上質で濃厚なだしが効いたお椀と爽やかな味わいのドレッシングで和えた千切りキャベツがつきます)。
不可能かと思っていた(?)かつ丼のバランス問題。組み合わせ方を変えたりするのではなく、強くしっかり揚げ切ったとんかつに旨味の深いだしと卵を組み合わせれば、定番のスタイルでも両立することがわかりました。
やはり、料理は王道を極めることが大切なのでしょうね。
文・写真:植野広生