ある日、かねて知人から聞いていた、横浜のおいしいカレー屋を訪れた松尾貴史さん。噂通りの味に早々と再訪を心に決めたようで――。
横浜中華街の近くに映画の撮影で通っている時、ふと畏友の田中康夫さんから「横浜でトップクラスにうまいカレーが食べられる店」とお薦めいただいた店のことを思い出した。ほぼ中華街にあると言っていい至近で、オフィスビルなども周りにたくさんあってさぞや日中は混むのだろうなあと思っていたので、ディナーでお邪魔したいと思っていたところ、運よく早めに撮影が終わり、マネージャーを伴って立ち寄ることにした。
すっきりした店内は清潔感があって快適な雰囲気で、「カラヒ・チキン」とスパイシーな「カチュンバル・サラダ」をいただくことにした。やはりインドカレーにはインドのビールキングフィッシャーが合うのだと決めつけ、運転しないでもいいのをいいことに一人だけでいただく。パパドゥがいいつまみになる。
サラダの刺激に少なからず驚きを覚えつつ、「大人の健康」と呟きつつカリコリといただき、「辛ひ」カラヒを勢いでいただいた。美味い、これはクセになる味だ。ふと、壁際に寄せてあるフードウォーマーを見て、昼間にバイキングをやっているのだとわかった途端、なるべく早く昼に再訪しようと心に決めた。ふた月ほど経って、東京から鎌倉に向かう途中に立ち寄ってみれば、ちょうど開店の1分前でシャッターが開けられるところだった。
ランチバイキングのこの日のラインナップは玉ねぎをふんだんに使ったカレー「チキン・ドーピアザ」、緑豆のスープカレー「グリーン・ムングダール・タルカ」、キャベツとジャガイモのドライカレー「キャベジ・アルー・ドライ」、野菜のインド風天ぷら「ミックス・ヴェジ・パコラ」で、これらを野菜サラダと一緒にほしいだけいただける。
私の下手な盛り付けと下手な写真で恐縮だが、料理の味は素晴らしい。100円足すだけで、タンドール料理を追加でき、この日は色鮮やかなチキンティッカだった。これがまたいい酸味とスパイスのバランスよい香りで、ジューシーかつ柔らかいけれど程よい弾力の歯触りで、これが100円の追加でいただけるという感動めいたものがあった。
ご主人が「やはり先日こられたのも松尾さんだったのですね、田中さんをお呼びしましょうか」とおっしゃれど、「いえいえ、僕は食べたらすぐに出てしまいますので」と申し上げた。ところが、車でちょうど近所に来られていたとかで忽然と現れたヤッシー。カレーを食べながら横浜についてのよもやま話をしつつ、パーキングメーターの枠に駐車してきたので慌ただしく退散、メーターの経過時間は59分だった。
文・撮影:松尾貴史