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「Letterpress LettersCanteen」のランチボックス|編集部員の校了めし④

「Letterpress LettersCanteen」のランチボックス|編集部員の校了めし④

dancyu1月号「いま、東京で行きたいのはこんな店です。」特集に掲載した“編集部員の校了めし”。誌面では、長時間の作業に追われる雑誌づくりの校了期間中に、どうしても食べたくなるご飯を6人の編集部員が紹介しました。dancyuWEBでは、それぞれのお店について詳しくご紹介します!

気分がアガる美味しさが詰まっている

本誌デザインを手掛ける「細山田デザイン事務所」は、東京の富ヶ谷という場所にある。東大を突っ切って、「駒場東大駅」から歩いても、千代田線の「代々木公園駅」から歩いていっても10~15分くらい。代々木上原からも歩けなくないような、そんな場所にある。
会社の福利厚生が充実している細山田デザインには社員の食堂スペースがあって、夕飯頃になるとぞろぞろとデザイナーたちが集まってきて食事をしている。それがいつも羨ましかった。外からみると、和気あいあいとしたおしゃれな店のようなので、レストランかと思って入ってくる人もいたそうだ。
夕方、社食の準備が始まるまでの時間を有効活用してなのか、あるときから、マダムの細山田亜弥さんが昼間の時間に店を始め、水曜から土曜日までは、誰でも利用できるカフェになった。

入口

亜弥さんはもともと、海外駐在もこなしながら、フランスの企業でバリバリ働いていた御仁なのだが、「料理が好きだから通ってみようかなー」という軽い気持ちで、休日の土曜日に、代官山にあった『ル・コルドン・ブルー』に通い始めて、5年をかけて料理と製菓のグラン・ディプロムを修めた。第一線で働く会社員が、週に一度とはいえ、毎週土曜日を一度も欠かさず5年間通い続ける、というのがどれだけ痺れることか(数回休むと進級ができない)。海外出張はなんとか平日に押し込め、土曜日の授業に戻ってくるために国内出張なら日帰りもし、こんなに苦労して身につけた料理と菓子の調理技術なのに、卒業の日に「よくがんばったね!」と褒めてくれたフランス人講師は、同時に「やめて使わなかったら120%忘れるよ!」とも言った。錆びつかせるのは勿体ないから会社のほうをスパッと辞めて、迷っている暇もないので、できるところで店を始めてしまった、という訳だ。

細山田亜弥さん

話は戻ると、この店の営業は少し変則的だ。1週間分の仕込みをして、水曜日から土曜日までの4日間営業する。時々、長い休みもある(注意・研修です)。
その4日の営業日には、朝8時から日替わりのランチボックスが準備されている。メニューは、フランスの市場で必ず売っていて、テイクアウトできるような定番の惣菜、ローストチキン、キッシュ、ラザニア、パエリアの4品だ。どの曜日にどのメニューが登場するかは、その週のチキンの入荷と仕込み次第。私はローストチキンに当たる確率が多いが、好きなので、いつもラッキー、と思う。なんとなく、「当たりだ!」と思うのが、パエリアの日。立派な海老もムール貝も入っているし、店で食べても、会社や自宅に持ち帰って食べても、非常に気分がアガる。
このランチボックス、何度食べても驚くことがある。それが、グリーンサラダの量。例えばこのパエリアの器を持ち上げると、箱の中で増えているんじゃないかと思うくらいたっぷりしている。そして、ドレッシングがめっぽう旨い。フランス料理の基本のヴィネグレットだと亜弥さんはおっしゃるが、「違うのは、マスタードがちょっと入っているくらいかな、、、、あ!蜂蜜もちょっと、、、あと、くるみオイルも入るからかなあ、、、」。おいしいからもっと欲しい!というお客さんはいませんか?と訊ねると、「そういう方にはレシピをお渡しています」と爽やかな返事が戻ってきた。
近隣の住民にはすでに評判で、昼前に売り切れていることも多々ある。そんなときも、がっかりすることなかれ。亜弥さんのつくるお菓子は、どれを食べてもしみじみおいしいから。「お菓子はつくるけど、料理専攻だから、速いけど粗いんだよね!」と謙遜するが、小腹も満足感も満たしてくれる、しっかり焼かれた甘いものはどれもお薦めだ。信頼を置く「シングルオー」のハウスブレンドも一緒にどうぞ。
看板犬アレックス君もいるから、わんこフレンドリーで、亜弥さんもフレンドリーなほっとする店。お近くにお立ちよりの際は、ぜひ思い出してみてください。ただし!営業しているのは、水曜日から土曜日までですよ。

ショーケース
ショーケースには、3~4種類のパウンドケーキ、季節がわりのタルト、焼き菓子が常に並んでいる。このほか、キャロットケーキもお薦めです。
日替わりランチボックス
日替わりランチボックス1,200円、コーヒー付き1,300円。こちらはローストチキン。校了作業中でもよそ見をしながら(ごめんなさい)つついて食べられる、ムネの部位が好きです。
クレームブリュレ
新登場のクレームブリュレ450円。テイクアウトもできるが、表面のジャリッとしたカソナードは2度焼いて提供するので、カリカリを楽しむならイートインでどうぞ。

店舗情報店舗情報

Letterpress Letters Canteen
  • 【住所】東京都渋谷区富ヶ谷2‐20‐2
  • 【電話番号】03‐6407‐0015
  • 【営業時間】8:00~17:00
  • 【定休日】日曜、月曜、火曜
  • 【アクセス】京王井の頭線「駒場東大駅」より10分、地下鉄「代々木公園駅」、小田急線「代々木八幡駅」より各10分

★2023年1月いっぱいはお休みです。

撮影:土居麻紀子 文:杉渕水津