宇都宮であちこち呑み食い歩いた最後にたどり着いたのは、家族で賄う適度に静かな空気が流れる食堂でした。料理はどれも素朴でほっとするような味わい。しかし、ポテサラはキラッと輝き、シャキッと“立って”いました……。
「誇れる宇都宮愉快市民」というPR大使を拝命していることもあり、我が地元・宇都宮を盛り上げる企画をいろいろ検討しています。ある企画のため、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いたタイミングでロケハンに行きました。
宇都宮はもちろん“餃子の町”として知られていますが、餃子だけでなく、居酒屋やバーなども充実しているんですよ。久しぶりにあちこち呑み食い回りましたが、改めてそれを実感しました。
餃子、きのこ鍋、焼きそば、もつ焼き、煮込みなどを堪能した後に立ち寄ったのが「まさみ食堂」でした。路地に佇む店構えとのれんは昔ながらの地味な(失礼!)食堂の雰囲気ですが、ショーウインドーにはかわいい文字のメニューが。そのギャップがちょっと不思議でしたが、厨房でご主人と娘さんが料理をつくっているのを見て納得。いい形で店が継承されているのですね。
食事だけでなく呑める食堂なので、まずは酒を注文。酒と一緒に出てきたのは白菜の漬物と大根の煮物。味の濃さと量がとても程よく、ちょっと嬉しくなりました。これで勢いがついて、野菜炒め、餃子、唐揚げ、オムライス……いろいろ注文しました(僕一人ではないですよ!3人でつまみました!)。どれも、本当に普通で際立った特徴がないのですが、ホッとするような安心して毎日食べられる味わいでした。本当に、近所にあったら毎日来たくなるような素晴らしい日常の美味しさ。
しかし、その中でやや異なる趣だったのがポテサラ。ポテサラ自体はごくシンプルな要素と味わいなのですが、その上に、スライスした玉ねぎと小ぶりの乱切りきゅうりがのり、ドレッシングがかかっていました。全国各地、メニューにポテサラを見つけると必ず食べるポテサララバーの僕は、気を衒わないシンプルなものを最上としているので(シンプルな構成の中で味わいを高めることこそポテサラの醍醐味と思っています)、こうした余計な(?)要素を加えたタイプは正直苦手です。でも、このポテサラは玉ねぎときゅうりの瑞々しさが粗暴なポテサラの味わいを心地よく引き立ててくれて、素直に美味しい(そしてビールとレモンサワーに合う!)。
昔も今もそしてこの先も変わらぬであろう雰囲気、父から娘へ受け継がれる味わい、そんな静かな空気が流れる食堂で食べているからこそ、美味しさを感じるポテサラなのでした。
写真・文:植野広生