「レストラン」という言葉は「回復する場所」という意味からできました。確かに、素敵なレストランで食事をすると、元気が回復しますよね。「ラフィナージュ」の高良康之シェフは、いつも美味しい驚きでわれわれを楽しませてくれるし、元気や笑顔を“回復”させてくれます。この日、最後に出てきたフレンチトーストも、思わず笑顔になってしまうものでした……。
「ラフィナージュ」は素敵なフレンチレストランです。料理が素晴らしく美味しいだけでなく、高良シェフの明るく楽しい性格(茶目っ気も含め)が皿の上にも現れるからです。
この日も見て楽しく食べて感動、の皿が続きました。前菜の“海水のジュレを纏ったカリフラワーのムースとズワイ蟹”に始まり、シェフのスペシャリテのひとつである“トラフグのマリネ、ロックフォール風味”(トラフグに青かびチーズを合わせるなんて!それが絶妙の相性でさらにびっくり!)“ラングスティーヌとセップ茸のラヴィオリ、カプチーノ仕立て”メインは“北海道より蝦夷鹿ロースのロースト、ポワヴラードソース”、そしてデザートは“クレームダンジュと早生みかんのコンポジション”と“フレンチトースト”。ん?デザートがフレンチトースト???
料理とワインを楽しみつつも、最後のフレンチトーストってなんだろう?とずっと気になりました。そしていよいよ最後の一皿が登場。それは、フレンチトーストの上にバニラアイスがのり、そのうえにトリュフがたっぷりかかったものでした。
みんなが驚きの声を上げていると、高良シェフが厨房から出てきて「このフレンチトースト面白いでしょ?」と、にやり。
面白いだけでなく、トリュフの力強い香りがバニラの香りを引き連れてフレンチトーストの甘みやコクを引きたて、口の中で旨味がふわっと広がる絶品でした。
トリュフと卵は相性がいいので、なるほどフレンチトーストにも合うのは不思議はないのですが、(フグとロックフォールもそうですが)驚くような組み合わせの妙をさらりとやってのける技術と、それを出して客が驚く顔をするのを楽しそうに見ている高良シェフは、素敵な料理人です。
一流の料理人は美味しい皿をつくることよりも、客が笑顔になる“食事”を提案してくれるのだと、改めて感じました。それは、決して高級食材を使うからではなく、客を楽しませてくれる心を持った料理人の一皿だからこそ、美味しくて楽しいのだとも。
写真・文:植野広生