松尾貴史のカレードスコープ
手前「咖哩」で恐縮ですが|松尾貴史のカレードスコープ㉔

手前「咖哩」で恐縮ですが|松尾貴史のカレードスコープ㉔

タレント、コラムニストとして活躍している松尾貴史さんですが、実はとあるカレー店のオーナーでもあります。松尾さんが思い描き、つくりあげたカレーの味わいとは――。

「大いなる」カツカレー

dancyuでカレーの紹介をさせていただくに当たって、手前味噌、いや手前咖哩は極力避けようと思っていたけれども、私自身が体調を崩して緊急入院となってしまい、取材に赴くことができなくなり、いつか来るであろう連載の最終回の題材にしようかと目論んでいた下北沢「般゜若(パンニャ)」を、今回使ってしまうことをお許しください。

2009年3月8日、下北沢から東北沢に抜ける茶沢通り沿いに7坪の小ぢんまりとしたカレー店としてオープンした。早いもので、来春13周年を迎えることになる。下北沢のカレー専門店としてはもう古株の部類に属するのではないだろうか。

オリジナルのスパイスでサラサラしているがコクのあるカレーを提供したいという思いで開店の2年ほど前から試行錯誤して収斂したのが現在のパンニャのカレーのベースになっている。現在の場所に移転してからの、スタッフの才覚と努力によるカレーの進化は著しく、香りと心地よい刺激が命のカレーはなかなかに奥が深いものだと実感する。

カレー

ベースとなるのは、個性はあるのにクセがない「チキンカレー」で、キーマとのあいがけ「チキンとキーマのハーフ&ハーフ」も人気メニューだ。
「マハーカツカレー」に乗ったとんかつが黒いのは、もちろん揚げ過ぎて焦げたわけではなく、カツの衣にイカ墨のパンを使ったパン粉を使用しているからだ。大阪のお初天神にある「変作豚料理」の名店「涿屋」の御主人に頼み込んで、黒いパン粉を使用させてもらっている。

カレー

ちなみに、「マハー」とは、インドのサンスクリット語で「大いなる」という意味だが、こんなに背負ったネーミングにしたのは若気の至りだとご容赦を。「カツカレーというと重くて苦手」という方にも、軽やかに召し上がっていただけると自負している。
気が向かれたら、シュワっとしたハイサワーとのマリアージュ、スパイスの香りもふんだんなチャイもお楽しみください。
いや、今回は完全に手前咖哩ですみません。

店舗情報店舗情報

般゜若 PANNYA CAFE CURRY(パンニャ)
  • 【住所】東京都世田谷区北沢2‐33‐6
  • 【電話番号】03‐3485‐4548
  • 【営業時間】11:30~15:30(L.O) 17:30~21:30(L.O)
  • 【定休日】水曜
  • 【アクセス】京王井の頭線「下北沢駅」より3分

文・撮影:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。