松尾貴史のカレードスコープ
初めて食べるのにノスタルジーなインドカレー|松尾貴史のカレードスコープ㉑

初めて食べるのにノスタルジーなインドカレー|松尾貴史のカレードスコープ㉑

西の文化圏で青年期を過ごした松尾貴史さんは、東京のカレー文化というとなじみが薄い感覚があるそうです。しかし、東京カレーの代表格「デリー」の流れを汲むとあるお店で食べたカレーは、なぜか懐かしさを感じてしまうようで――。

自然と食べたくなる魅惑の辛味

上野で1956年に創業された「デリー」の流れを汲む、この「ボンベイ」の味に、古くから親しんでいるカレーファンは多いと聞く。
私は社会人(?)になるまでは神戸、西宮、大阪近辺にいて、その歴史に触れる機会がなかなか無かったので、その辺りのカレー文化では知らないことが多い。
「ボンベイ」の店名は知っていたけれど、実は今回初めて食べることができた。たまたま恵比寿で所用があったので、少しうろついてたどり着くことができたのだ。

いわゆる立ち食い形式で、コロナ対策もあるのだろうけれど、店内で同時に食べられるのは5人までという、なかなかにタイトな状況。
到着した時に私の前は4人が並び、大したことはないと思っていたけれど、それでも15分ほど待つことになった。
その間にメニューを見て、「インドカレー」と、「コールスロー」をいただくことにした。自動券売機で、合計1,000円。プラスチックのタグを購入して、さらに少し待ったあたりでご飯の量を聞いてくださり、「普通でお願いします」と答えて、待つことにさらに5分ほどだろうか。

カレー
コールスロー

出てきたスタイルは、なるほど「デリー」と共通する世界観、サラサラのグレイビーなのに何故か懐かしく思える風味と後味。鋭い辛さがライスの実直な感じと相まって、私がノスタルジーを感じるはずがないのに懐かしい。
しかし、その味わいを立ち食いでいただくという不思議な「今風」の、しかし店のスタッフの方たち(日本人女性とインド系の方と思われる男性の丁寧なオペレーション)が、応対も清々しく、待ち時間も何もストレスがないようにしてくださる。

若い頃にこの味をしめると、きっとヘビーユーザーになっていたであろう、癖になる辛味、そして私にとっては恵比寿という、頻繁にうろつく街にできてしまったからには、またきっと足が向かうのだろうなぁ、自然に。

店舗情報店舗情報

カレーの店ボンベイ 恵比寿店
  • 【住所】東京都渋谷区恵比寿南1‐23‐1
  • 【電話番号】03‐6452‐3365
  • 【営業時間】11:00~21:00 (L.O.) 日曜、祝日は~18:00
  • 【定休日】不定休
  • 【アクセス】JR「恵比寿駅」より6分

文・撮影:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。