舞台前の稽古期間は、松尾貴史さんにとって新たなカレー店開拓の期間でもあるようです。探索を進めていると巣鴨に繁盛しているネパール料理店を発見。早速入ってみることにしました。
舞台の前になると、稽古場として普段とは違う街に毎日通うことになるので、周辺のカレー店を探す癖がついている。
今回の稽古場から巣鴨がほど近いことに気づいて、なかなか行く機会がないので稽古前にうろついていたら、「プルジャ・ダイニング」というネパール料理の店を見つけた。
迷わず入ってみると満席、しかしいいタイミングで1人のお客さんが出るところで、明るく優しい雰囲気の店員さんが「すみません、今用意します~」と。ネパール人のご夫婦と思われるおふたりで切り盛りされている様子。
店内には夥しいとうもろこしなどの野菜が吊るして干してあるが、装飾も兼ねているのだろうか。
隣のテーブルでは、ネパールからきていると思われる若い女性3人が、ネパール語らしき言葉で、それは素晴らしい早口で喋るのが聞こえてきて、異国情緒満載だ。
私の反対側の壁際には、1人で何本かビールを飲んで長居をしているお客さんがいる週末の風情。その方、ようやくカレーを食べ始めようとしたら、カトラリー入れにスプーンがなかったようで、しかしお店の人が2人とも厨房に一旦入った頃合いだったのでので自分で取りに行った。すると、それを見つけたご夫婦(?)は二人で大変な失態を演じたかのように「先生すみません!本当にすみません!」と何度も謝り続けるので、「先生」は逆に申し訳なさそうにしていた。
下町の優しい光景を微笑ましく見ているうちにこちらの頼んだ「プルジャ・セット」のチキンバージョンが運ばれてきた。他にも素敵なセットが色々あったが、初心者として選んでみた。
ダルを一口。優しい家庭の味の雰囲気、毎日これで健康管理が出来そうな舌触り。ネパール人ではないのに故郷の味を感じる。
チキンカレーは快適な香りとバランスの良い味、しかし周りのアチャールがまたそれぞれいい味がついていて、ついおかずにしたくなって食べ過ぎ、ライスのおかわりをもらうことになった。
発酵させたものだろうか、チャツネ風のペーストがなかなかに個性的、そして強い辛さだがもらって帰りたいほどの珍味。
10年前から始めたようで、巣鴨に移り来て8年だとか。ここの駅に降りたら、まずはここに足が向かうだろう。
文・写真:松尾貴史