インドの南に浮かぶ島国スリランカ。スリランカカレーは大陸のカレーと一味違った雰囲気を持っていて、現在では日本でも人気店があります。その先駆けとも言える名店が、大阪・肥後橋にありました。そこで食べられる魅力的なあいがけカレーとは。
大阪は四つ橋線「肥後橋」駅にほど近い、ビルの裏路地へ抜ける通路にひっそりとたたずむ名店「カルータラ」は、その名(スリランカの南西岸にある港町カルタラ)の通り、スリランカ風のカレーを食べさせてくれる老舗だ。
昔、仕事の関係でスリランカに数ヶ月滞在した店主の横田さんは、元々は口に合わないと感じていたスリランカの料理になぜか引き込まれていき、カレーの研究を重ねて、1998年にこの地に開店した。大阪にもスリランカ料理の店はあっただろうけれども、現存するスリランカカレーを専門とする店はここが最古ではないだろうか。
日によって違うこともあるが、「レンズ豆のカレー」「ビーフカレー」「チキンカレー」「レンズ豆のカレーとビーフカレーのあいがけ」「レンズ豆のカレーとチキンカレーのあいがけ」という感じのメニューなのだが、珍しいのは、あいがけの方が手間もかかるはずなのに、単品よりも値段が安いことだ。
横田さんの作るカレーは、レンズ豆のカレーとそれぞれ肉のカレーを一緒に食べることで完成形になるので、それを推奨するためにこの設定になっているのだろうと想像した。「その証拠」というのもおかしいが、レンズ豆のカレーの味のストレートな感じと、シャープな辛味が力強い。つまり、それぞれで相乗効果が生まれる味わいなのだ。つまり、豆のカレーが、他店によくある「副菜」としての脇役的位置づけではなく、主役のひとりなのだ。だからこそ、このパンチが必要なのだろう。
この辺りはオフィス街なので、昼時には夥しい人たちが通りへ流れ出してくる。もちろんカレー店も多く、不思議な立ち食いの無水カレー(ヨーグルトやトマトなどから出る水分で調理しているのだろうか)の店まである。私は15年ほど前に大阪の友人からその店を教えられ、途中で偶然見つけて入ったのが初「カルータラ」だったが、いっぺんで病みつきになった。
個人的には、その頃生まれたお嬢さんの名前をつけるタイミングだったので、相談されて一緒に考えたのもいい思い出になっている。
文・写真:松尾貴史