カレーが大好きで、日々カレーを食べ歩く松尾貴史さんが今回訪れたのは、福岡市のインドカレー店「106 サウスインディアン」。初訪問のお味はいかに?
東京や大阪以外の地域に出張となると、どうしても馴染みの店よりも初めての店に行きたくなる。近年、福岡にも「クロネコード」「久保カリー」など巧いスパイス使いのカレー店が増えてきたが、2015年にできたこの店の存在は知らなかった。初訪問なので念のために早目に行ってみた。11時30分開店なので10分頃に到着すると、すでに先客が6人並んでいる。開店して席に着き注文を済ませる頃には満卓となって、外に行列ができている。大変な人気店なのだということがわかる。外観はおしゃれなビストロかワインバーを思わせ、「カレー屋さん」という印象ではない。
「サウスインディアン」という店名なので南インドに特化しているのかと思いきや、ナン、チーズナンも選べて(チーズナンは追加料金)、カシミールカレーもメニューにあるので、様々なニーズに応えている様子。
サラダ、スープorサモサ、ソフトドリンク、ナンorライス、大振りのタンドリーチキン、選ぶカレーがついた休日のBセットをオーダーすることにした。
スタッフたちのテキパキとした動きは統制が取れていて、広めの店内を達者に行き交う。「インドの五つ星レストラン経験のシェフ」との触れ込みなので、否応なしに期待度も高くなる。
小皿だけれどびっしりと詰まったサラダをワシワシと頂く。ドレッシングがインド料理店によくあるオレンジ色の甘みのあるものではなく、おそらく自家製のオニオンドレッシングで、これは私好みだ。
インド料理の店は、東京都内でも夥しくあるが、あれほど広い国土で多様な宗教や食文化があるはずなのに、違う店名でも似通った味やメニューが多いのには、きっと元締めになっていて、出店支援などができる支柱的存在がいるのだろうと思っている。こういう個性的な店を発見すると、得をした気になって嬉しい。
タンドリーチキンがなかなかにボリュームがあり、大きな塊が鉄皿にどしんと置かれた雰囲気。それにマリネされていたであろうソースがサラサラとしたグレイビーで、なかなか快適な味だった。肉の弾力も、好みにもよるだろうけれどもありがたい噛み心地、これまた好みだ。この副菜だけでライス一枚がいける感じがする。
カシミールカレーは、東京のデリーのカシミールカレーを、味も具材も食感も忠実に再現している。不思議なほど似ているので調べてみたら、なるほど、シェフは東京のデリーでも経験を積んでいたのだそうだ。こういう系譜が広がって続くことは歓迎したい。
文・写真:松尾貴史