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もつ煮専門店といえば「沼田」|東京もつ煮名鑑2021 ①

もつ煮専門店といえば「沼田」|東京もつ煮名鑑2021 ①

居酒屋の定番メニューの中でも、家庭でつくるのが難しい料理といえば、「もつ煮込み」でしょう。「とりあえずビールと煮込みね!」なんて気軽に注文しがちですが、とにかく手間と時間がかかる料理なんです。2021年2月号「煮込む。」特集、「東京もつ煮名鑑2021」では都内の酒場を60軒以上食べ歩き、厳選したもつ煮の名店13軒を案内しています。その中から、今回は新宿三丁目にあるもつ煮込み専門店を、本誌に収まりきらなかったエピソードも交えつつご紹介!

ここはもつ煮のワンダーランド!

“もつ煮込み専門店”と言えば新宿三丁目だ。
昭和の雰囲気を残す「沼田」には煮込みだけで、味噌、醤油、塩という王道の3種に加えて、咖喱(カリー)味や和牛スジのデミグラス煮込みまでずらりと揃う。さしづめ煮込みの満漢全席といった趣だ。

看板
新宿三丁目の末廣亭裏手の路地にある、「もつ煮込み専門店 沼田」。同じ三丁目内に支店を3つ構える他、神奈川県内にも系列店がある。
メニュー
味のバリエーションも含め、もつ煮の種類は全部で8種類!

しかも具に応じて、全煮込みの味つけを変える徹底ぶり。ガツ、シロ、テッポウといった豚のもつは風味豊かな味噌味でこっくりとした統一感を出す。

もつ煮
もつ煮(味噌)390円には、ガツ(胃)、シロ(大腸)、テッポウ(直腸)など豚もつを中心に、ナヘラ(ギアラ、牛の第4胃)が加わる。辛味噌味430円もある。

盲腸、丸腸、ギアラ、チレなど濃厚な味わいの牛の内蔵はキレのいい醤油味、他の部位にはない奥行きある食感の牛ほほ肉とセンマイは塩味という具合だ。夢幻の味と食感につい鉢を重ねてしまう。

もつ煮(醤油)390円。丸腸など牛もつの脂の旨味と甘さが、醤油ベースの上品な味付けで際立つ。
もつ煮(塩)390円。牛ほほ肉やセンマイが入った塩ベースのもつ煮は、柚子胡椒、にんにく、梅と日替わりで風味を変えて提供される。

ゆで時間、加える香味野菜なども、畜種や部位ごとにていねいに水洗いと下ゆでをしてから本番の煮込みに入る。
「ゆでるときに加える香味野菜もタン下はネギだけ、ほほ肉には生姜も加えます。一本一本脂の入り方が違う牛もつなどは、脂の具合を見ながら下処理とゆで方を変えています。正直、仕込みがたいへんで……」と羽牟雄樹総料理長も苦笑い。

もつ煮(咖喱)
もつ煮(咖喱)390円。スパイスから調合した風味豊かなカレー煮込みには、トッピングのバゲットと一緒に食べるとさらに美味しい。
羽牟雄樹さん
新宿エリアに4店舗ある「沼田」を取り仕切る総料理長、羽牟雄樹さん。もつに対する愛情と仕事の丁寧さには頭が下がる。

下ゆでしたもつは煮汁ごと冷蔵庫に入れ、冷えて固まった脂を徹底的に取り除く。だから風味は濃厚なのに、口当たりは軽快そのもの。極彩色の味わいのもつをつまむ箸が止まらなくなってしまう。
煮込みは仕込みで積み重ねられた手間の分だけ旨くなる。ここは楽しすぎる煮込みのワンダーランドなのだ(ただし客側の目線で見たときに限る)。

もつ煮全メニューを制覇するのもオススメ!

店舗情報店舗情報

もつ煮込み専門店 沼田
  • 【住所】東京都新宿区新宿3-6-3 2階
  • 【電話番号】03-3350-5029
  • 【営業時間】17:00~22:45(L.O.) 土日祝は16:00~
  • 【定休日】無休
  • 【アクセス】東京メトロ・都営新宿線「新宿三丁目駅」より2分

文:松浦達也 写真:本野克佳

松浦 達也

松浦 達也 (ライター/編集者)

東京都武蔵野市生まれ。家庭の食卓から外食の厨房、生産の現場まで「食」のまわりのあらゆる場所を徘徊する。食べる、つくるに加えて徹底的に調べるのが得意技。著書に『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)、『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(共にマガジンハウス)ほか、共著に『東京最高のレストラン』(ぴあ)なども。主な興味、関心の先は「大衆食文化」「調理の仕組みと科学」など。そのほか、最近では「生産者と消費者の分断」「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター。