日本酒の主な原料は米と水。でも意外に知らないのが米の種類とその特徴だ。実はたくさんの品種がある。“酒米”と呼ばれる酒造りのために栽培されている米について知ると、酒の背景にも興味がわいて、飲むのが楽しくなる。そして何より、酒米を育てる農家、酒を醸す蔵元の営みに思いを馳せれば、酒が一層おいしく感じられるはず!前編に引き続き、熊本大学の副島顕子先生と「いまでや」の小倉秀一社長のコメントとともに、酒米と酒を見ていこう。
日本酒ビギナーのための酒米講座【前編】では、作付け面積第1位~4位の代表品種を紹介した。だが酒米と一言でいっても、現在栽培されているものだけでも100種類以上。そして今なお品種改良の取り組みが進められている。
品種改良は特定の性質を強くもっている有望な株の選別や品種の掛け合わせをする人工交配、放射線(ガンマ線)照射による人為的な突然変異などで新たな特徴をつくり、それをさらに選別しながら品種を固定していく作業。ざっと10年以上はかかる先の長い取り組みなのだ。
そうした米の由来や系譜に思いを馳せるのも、酒のロマンといえるだろう。知らない米の名前を見つけたらネットで調べてみよう。蔵元や酒販店のウェブサイトでも詳しい解説をしているところがある。
酒米の優等生、山田錦の親にあたる品種が、山田穂(母)と短稈渡船(父/渡船2号ともいう)だ。上の写真を見るとわかるが山田穂は背が高く米粒も大きいため台風などで倒れやすい。それに背丈の短い短稈渡船を掛け合わせ、倒れにくい性質をもたせようと開発されたのが山田錦というわけだ。米の背丈だけを比べてみても人工交配による品種改良の狙いがわかりやすい。
ルーツは兵庫県とされ、日本酒ビギナーのための酒米講座【前編】で西日本を代表する酒米として紹介した山田錦と雄町を祖父母にもち、民間で育種されてきた品種。山田錦よりも粒が大きく、倒れにくい性質も獲得した優良品種で、近年、普及してきた人気の酒米。心白の大きさから“酒米のダイヤモンド”の異名も。