酒米を知れば、日本酒がもっと楽しく!
日本酒ビギナーのための酒米講座【前編】~東西を代表する四つの酒米とは?

日本酒ビギナーのための酒米講座【前編】~東西を代表する四つの酒米とは?

日本酒の主な原料は米と水。でも意外に知らないのが米の種類とその特徴だ。実はたくさんの品種がある。“酒米”と呼ばれる酒造りのために栽培されている米について知ると、酒の背景にも興味がわいて、飲むのが楽しくなる。そして何より、酒米を育てる農家、酒を醸す蔵元の営みに思いを馳せれば、酒が一層おいしく感じられるはず!

酒米を知ると、なぜか日本酒に愛着がわいてくるのだ

今回、酒米のことについて教えてくれたのは熊本大学の副島顕子教授。植物分類の専門家で、日本酒好きが高じて趣味で酒米の調査を開始。

「酒米は酒造好適米ともいいます。まさに酒造りのためにつくられたお米。日本酒への興味の入り口としてとてもおもしろいと思いますよ」と副島先生。ご自身も酒米を調べる中で「この米はどこでつくられているのかな?どんな味わいかな」と次に飲む日本酒を選ぶ参考にするなど楽しみ方が広がったという。

次いで、酒米の“らしさ”を感じられる銘柄を推薦してくれたのが、千葉を拠点に、GINZASIX(東京・銀座)にも店舗を構える大手酒販店「いまでや」の小倉秀一社長だ。

「ワインがブドウの産地で語られるように、日本酒も地酒という言葉通り風土で語られるようになってきた。特に海外での日本酒人気の高まりから、酒米を育む地域性は酒のオリジンを語るものとしてますます注目されるはず」と話す。

さっそく副島先生と小倉社長のコメントを手がかりに、地域性豊かな酒米の世界をのぞいてみよう。

山田錦:やまだにしき――酒米の優等生

稲穂

兵庫県で1936年に誕生した酒米。作付け面積は、堂々の全国第1位。酒米の優等生とも呼ばれるほど。蔵元からも「造りやすく、狙い通りの酒になる」と圧倒的な評価を受ける。兵庫県産「特A地区」と呼ばれる産地の山田錦は最上級とされる。

副島先生
酒造りでは米を磨くといって雑味が出る部分を削っていきます。山田錦は粒が大きく、周りを削っても酒造りに重要な心白(=米の中心の白い部分)がしっかり残るのが特徴です。香りもよく味わいがきれいな酒になりますね。
酒瓶
日高見 純米 兵庫県産山田錦100%
造り:純米/蔵元:平孝酒造(宮城県)/価格:1430円(税込み)
東日本大震災から復活を果たし、地元の魚を印刷したラベルで再スタートを切った。山田錦を使った純米は甘味・酸味のバランスのよい味わいに定評がある。
小倉社長
新酒から秋までねかせて味がのるまでの間、いつ飲んでもおいしい。日高見の蔵元は大の鮨好き。魚料理をイメージした酒なので、日常の食卓で楽しんでほしい。
酒瓶
ドメーヌ貴 宇部山田錦
造り:純米大吟醸/永山本家酒造場(山口県)/価格:1980円(税込み)
蔵元で自ら酒造りもこなす酒造家として活躍する永山貴博氏。その酒「貴」のファンは多い。この純米大吟醸は地元産の山田錦で、土地の風土を酒の味に込める。
小倉社長
兵庫県産の山田錦と比べればややスッキリした印象だが、この蔵らしいわずかな渋みが感じられ、食事に合わせやすい。個人的には長期熟成して変化を楽しみたい。



雄町:おまち――最古参の酒米

岡山県にルーツをもつ、酒米としては最も古い銘柄。100年以上途切れずに栽培され続けている唯一の品種が雄町だ。作付け面積は第4位。

副島先生
粒が大きい反面、軟らかく磨きにくい面も。米の旨味が酒に溶けやすく味わいはふっくらし、旨味たっぷりの酒になります。
酒瓶
醸し人九平次 雄町 SAUVAGE
造り:純米大吟醸/蔵元:萬乗醸造(愛知県)/価格:2000円(税込み)
辛口、甘口と評されることの多い日本酒の中で、いち早く“五味”を酒で表現。きれいな酸味とわずかにビターな印象が、ワイン通をもうならせる。凛とした美酒。
小倉社長
雄町の新酒には渋みを感じることが多いが、この蔵の雄町は新酒からおいしく、アフターに酸と苦味のバランスがあってとても旨い。味の構成はさすがの一言に尽きる。
酒瓶
田光 純米吟醸 雄町
造り:純米吟醸 無濾過中取り生/蔵元:早川酒造(三重県)/価格:1917円(税込み)
小規模だからこそできる小仕込みの丁寧な酒造りを実践する蔵。軟らかい水の印象が好印象。田光(たびか)は近くの川の名前からとったブランド名。
小倉社長
雄町は火入れすると味が引き締まり、秋になると飲みやすくなる印象だが、生酒だと新酒でも飲みやすい。田光は一口目の香りが実にキャッチーで引き込まれる。
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