日本酒の主な原料は米と水。でも意外に知らないのが米の種類とその特徴だ。実はたくさんの品種がある。“酒米”と呼ばれる酒造りのために栽培されている米について知ると、酒の背景にも興味がわいて、飲むのが楽しくなる。そして何より、酒米を育てる農家、酒を醸す蔵元の営みに思いを馳せれば、酒が一層おいしく感じられるはず!
今回、酒米のことについて教えてくれたのは熊本大学の副島顕子教授。植物分類の専門家で、日本酒好きが高じて趣味で酒米の調査を開始。
「酒米は酒造好適米ともいいます。まさに酒造りのためにつくられたお米。日本酒への興味の入り口としてとてもおもしろいと思いますよ」と副島先生。ご自身も酒米を調べる中で「この米はどこでつくられているのかな?どんな味わいかな」と次に飲む日本酒を選ぶ参考にするなど楽しみ方が広がったという。
次いで、酒米の“らしさ”を感じられる銘柄を推薦してくれたのが、千葉を拠点に、GINZASIX(東京・銀座)にも店舗を構える大手酒販店「いまでや」の小倉秀一社長だ。
「ワインがブドウの産地で語られるように、日本酒も地酒という言葉通り風土で語られるようになってきた。特に海外での日本酒人気の高まりから、酒米を育む地域性は酒のオリジンを語るものとしてますます注目されるはず」と話す。
さっそく副島先生と小倉社長のコメントを手がかりに、地域性豊かな酒米の世界をのぞいてみよう。
兵庫県で1936年に誕生した酒米。作付け面積は、堂々の全国第1位。酒米の優等生とも呼ばれるほど。蔵元からも「造りやすく、狙い通りの酒になる」と圧倒的な評価を受ける。兵庫県産「特A地区」と呼ばれる産地の山田錦は最上級とされる。
岡山県にルーツをもつ、酒米としては最も古い銘柄。100年以上途切れずに栽培され続けている唯一の品種が雄町だ。作付け面積は第4位。