西荻窪にある母と娘で営むモロッコ料理専門店「タムタム」では、異国情緒漂う店内で、羊が苦手な人にもお薦めできるほど、やさしい味わいの羊料理が楽しめます。お好きなみなさんならご存じのように、羊はクサいとか、カタいとか、そんなのは昔の話。今や幅広いジャンルで、香り高く軽やかで、素晴らしくおいしい羊料理が食べられます。そんな羊がおいしい店をご紹介します!
西荻窪の住宅街の一角に立つ「タムタム」は、モロッコ料理の専門店。民族音楽と伝統工芸に彩られ、異国情緒漂う店を営むのは、太田ヤスミンさんと母の知加子さんの親子だ。
ヤスミンさんの父は、モロッコ系イギリス人。ゆえに料理は、イギリスと日本の感覚もミックスされているとの説明に興味を抱いて頼んだラムのタジンは、グツグツ煮立った鍋の蓋を開けるとトマトソースがふわり香る。4~5時間煮込んだというラム肉は、ほろほろ柔らか。野菜にはソースの旨味がしみているが、羊特有のくせを感じさせないやさしい風味に魅せられる。その秘密は、オーストラリア産ラムレッグの余分な脂を丁寧に取り除くのに加え、ハラル(ムスリムの教義に則した処理を施す)にもあるとヤスミンさん。
「ハラルの肉処理は血抜きが徹底しているから、羊も臭みがないんです」
クミンやコリアンダーなど多数のスパイスやハーブが使われているのに、まろやかな旨味が立つのにも和む。
「何を入れているのかわからないようにするのが、モロッコでは上手な料理人」というヤスミンさんの言葉に、厨房を担う知加子さんの技を実感した。
ハンバーグ、モロッコカレーなどほかのラムメニューも、同様のおいしさ。ぜひ扉を開けてほしい一軒だ。
文:山内史子 写真:岡本 寿
※この記事の内容はdancyu2018年6月号に掲載したものです。