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炭火焼きが主役のトラットリア「ブカ・マッシモ」|笑顔あふれるイタリアン⑤

炭火焼きが主役のトラットリア「ブカ・マッシモ」|笑顔あふれるイタリアン⑤

門前仲町にある「ブカ・マッシモ」炭火焼きを主役にしたお店です。下町らしく肩ひじ張らずに和やかな雰囲気の中で、素朴だけど美味しいトスカーナ料理を楽しめます。

肉、小麦、ワインに集う

料理
イタリア製スライサーでふわりとエアリーな食感のパルマ産生ハム16ヶ月。ブラッティーナチーズと山形産ラ・フランス添え。1,944円。
料理
炭火焼3種盛合せは内容により6,000円前後。写真は会津産馬肉ハラミ、北海道池田町褐毛和種いけだ牛、北海道十勝遊ぶた肩ロース。

かつて深川と呼ばれた門前仲町で、大沼清敬シェフは肉を焼く。
「ピッツァもパスタもつくってきたけど気づけば肉を焼いてばかりいました」「ブカ・マッシモ」は、彼が一番自信のある炭火焼きを主役にした店。元ガレージの板壁や石床を生かした空間では、客席から見上げる厨房が舞台だ。
艶やかな肉の巨塊をドンとまな板にのせ、シェフが手にするのは糸鋸である。分厚く切り分け、今度は無骨な煉瓦の焼き台にのせる。この状況で目の前にウォークインセラーがあるのだから、そりゃあボトルでいくだろう。
朦々と上がる煙にワインが加速するのは大人たち。キラキラの目で駆け寄るのは子供たち。「子供連れがダメな食堂はない」と、トスカーナの素朴な料理が並ぶテーブルは、週末ともなれば家族の賑やかな食卓に変わる。

シェフ
トスカーナ料理「デリツィオーゾ フィレンツェ」総料理長を経て独立。元同僚の高橋香織さん、髙村友香さんと息の合った三人四脚。

メニューを見ずに「今日、何?」から始まるイタリア人みたいなお客もいる。いつも突然のお客もいる。「次回から予約を」とお願いすると、「深川の人間に予約させるのか」と笑われた。それでもお願いするのは「断りたくない」からだ。彼らに胸を張って語れる食材を選び、彼らの体を思いやって料理する、祭りと人情の町のトラットリア。今日もシェフは肉を焼き、旨い煙の立つところに人は集まる。

料理
一本一本、手でよってのばすシエナ名物のパスタ、ピーチ。むっちりした食感に、にんにくを効かせたトマトソースがからむ。シェフが旅したシエナの記憶を辿った味。1,620円。

店舗情報店舗情報

ブカ・マッシモ
  • 【住所】東京都江東区富岡1‐24‐11
  • 【電話番号】03‐5809‐9022
  • 【営業時間】17:30~21:00(L.O.) 土日祝は11:30~13:30(L.O.) 17:30~20:30(L.O.)
  • 【定休日】月曜 他に不定休あり
  • 【アクセス】東京メトロ・都営大江戸線「門前仲町駅」より3分

文:井川 直子 写真:海老原 俊之

※この記事の内容はdancyu2017年11月号に掲載したものです。

井川 直子

井川 直子 (文筆家)

文筆業。食と酒まわりの「人」と「時代」をテーマに執筆。dancyu「東京で十年。」をはじめ、料理通信、d LONG LIFE DESIGN、食楽ほかで連載中。著書に『変わらない店 僕らが尊敬する昭和 東京編』(河出書房新社)、『昭和の店に惹かれる理由』『シェフを「つづける」ということ』(ともにミシマ社)。2019年4月にインディーズ出版『不肖の娘でも』(リトルドロップス)を刊行。取扱い書店一覧、ご購入方法はホームページ(https://www.naokoikawa.com)からどうぞ。