明日、どこに食べに行こう?
コク深く爽快な味わいをふと食べにゆける「ボッテガ」|笑顔あふれるイタリアン②

コク深く爽快な味わいをふと食べにゆける「ボッテガ」|笑顔あふれるイタリアン②

広尾の「ボッテガ」は、経験豊かなシェフによる重厚な味わいのイタリアンを楽しめます。夜中にふとお腹がすいたときにもいける、懐の深い店です。そして、どこか後をひく軽妙さが通いたくなる店間違いなし!

真面目な愉快

店内
カウンター越しに、キッチンの阿吽の呼吸を眺めながら料理を待つ。上を仰げば、本好き、調べもの好きの笹川シェフの蔵書がずらり。
料理
秋トリュフと黒イチジクのインサラータ2,592円。黒いちじくのコクと、トリュフの“土”の香りに、密かに忍ばせたレモンのコンフィチュールの酸とほろ苦さが見事に調和している。

オナカはいつも気まぐれだ。まだ日の高い時間や深夜。時を選ばず、容赦なく腹は減る。そういう突然の腹ぺこは、田舎から連絡なしに友人が来たときのように、手厚くもてなしたい。しかし、そう都合よく、良き店は開いていない……。と思っていたら、広尾にある「ボッテガ」は違った。開店は夕方5時。ラストオーダーは夜中の0時である。勤勉かつ至便。
「ランチは営業しない代わりに、夜中までしっかりやろうと思いまして」
オーナーシェフの笹川尚平さんは、一見、高僧。近寄り難い。確かにひたむき。雑誌でイタリア料理に出会い、25歳のとき、彼の地へ。帰国後、ずっと名リストランテを指揮した。そして、この店の名は“工房”を意味する。ストイック。だが、話せばすこぶる軽妙。
「以前は大きな店にいたのでお客様と話せず、それは無口なものでした」

料理
メインとして、時折提供するウサギは、トスカーナの黒オリーブと一緒に白ワインで煮込み、パスタのソースにも。卵黄で練った、打ちたてのタリアテッレで歯切れよく。2,808円。

まだ慣れぬカウンター越しに照れながら冗談を言う。真面目で愉快、だ。この二面性が、料理にもあって、重厚なのに後をひく軽妙さがある。たとえば、トリッパ。コク深いのに爽快。手打ちのパスタは、オーダーを受けてから、できる限り打ちたてを出す。そんな“真面目な愉快”はクセになる。だから今日もここを訪れる。もちろん、不意に腹が減ったフリをして。

料理
さまざまなトリッパを食べ歩いたが、理想の味には出会えず。帰国後、ゆで汁を“だし”と考え、油脂と旨味ごと焼き煮込むという調理法に辿り着く。とろける歯ざわり、忍ばせたチーズの二重層に感激。苦手な人にこそ食べてほしい。2,376円。

店舗情報店舗情報

ボッテガ
  • 【住所】東京都渋谷区広尾5‐17‐8 アプリシエ広尾地下1階
  • 【電話番号】03‐6450‐3933
  • 【営業時間】17:00~翌24:00(L.O.)
  • 【定休日】日曜 不定休あり
  • 【アクセス】東京メトロ「広尾駅」より4分

文:加藤 ジャンプ 写真:大山 裕平

※この記事の内容はdancyu2017年11月号に掲載したものです。

加藤 ジャンプ

加藤 ジャンプ (文筆家)

1971年東京生まれ。横浜と東南アジア育ち。一橋大学卒業後、出版社勤務をへてフリー。酒と酒場、肴と酔っ払いを愛し、コの字酒場探検をつづける。著書に「コの字酒場はワンダーランド」(六耀社)などがある。テレビ「二軒目どうする?」(テレビ東京系)のおつまみさんとしても出演。ときどき絵も描く。