アメリカ発のステーキハウス「ウルフギャング・ステーキハウス」は、アメリカンサイズのTボーンステーキが楽しめます。老若男女関わらず、盛り上がること間違いなし!
ジュ、ジュ――ッ。本場アメリカンスタイルのTボーンステーキは、大胆にも、白い皿ごとオーブンに入れて仕上げ、そのまま客の前に登場する。肉の香ばしさと、ミルキーな甘い香り。その大きさと、がっちり焼き固められた肉の力強い表面までもが、たまらなく人を惹きつける。早く口に入れたいというストレートで野性的な思いがあふれて、思わず体が前のめりになるほどだ。
サービススタッフが、Tボーンの右側と左側を一切れずつ、スプーンとフォークを使って肉を取り分ける。フィレを口にすると、想像以上に柔らかくなめらかで驚く。次に少しピンクがかったサーロイン。こちらは噛むほどに甘味のある旨味が口中に広がってくる。
肉は、店にある熟成庫で28日熟成させ、カットして下焼きした後、熱したすましバターの上にのせて、900℃のオーブンで仕上げる。そう、ミルキーな甘味はバターの香り。力強い表面は超高温オーブンのなせる業。強い旨味は熟成の効果なのだ。
「ウルフギャング・ステーキハウス」はウルフギャング・ズウィナー氏がオープンした店だ。彼は、ニューヨークにある老舗ステーキハウス「ピーター・ルーガー」で、41年間もヘッドウェイターとして活躍。独立し、アメリカでも数店舗を構え、日本に上陸したのは、骨付きのUSビーフの輸入が解禁された2014年のこと。当時珍しかった熟成肉のTボーンステーキは大きな反響を呼び、黒船系ステーキハウスとして、瞬く間に人気店となった。後に上陸する「ベンジャミンステーキハウス」や「エンパイアステーキハウス」の先駆けとなり、その地盤を築いたと言っても過言ではない。
一時のブームは落ち着き、今改めて「ウルフギャング・ステーキハウス」を訪れてみると、ビジネスシーンはもちろん、カップルや、家族三世代など、幅広い年齢層の人々が楽しそうに食事をしている。それは、肉の美味しさもさることながら、気取らず場を盛り上げてくれるアメリカンなサービスと、落ち着いた高級感が同居した、居心地の良い空間だからだろう。2020年までには、いよいよ「ピーター・ルーガー」が上陸することも決まっている。日本にもそろそろ、ステーキハウス文化が根付いたと言えるかもしれない。
文:浅妻 千映子 写真:海老原 俊之
※この記事の内容はdancyu2018年10月号に掲載したものです。