カウンターの目の前には赤々と燃える薪の炎と炭火。網の上に並ぶは大小さまざまな塊肉。黒板の手書きメニューに目をやれば、“熊本あか牛 サーロイン”や“宮崎尾崎牛 肩ロース”など肉ラバーのハートをわしづかみにするステーキが7種も書かれている。しかも100g からオーダーできる手軽さ。前菜を飛び越して、ミント入りのレモンサワーを片手に、いきなりステーキを楽しめるのだ。
まずは繊細な柔らかさの“北海道産長期肥育牛 フィレ”でスタート。噛みしめるたびにピュアな肉汁がにじみ出る。続けて真紅の断面が美しい“岩手県産牛 サガリ”を。しなやかな身と強い旨味に、すぐさまワインを追加注文。そして濃厚な赤身の“山形米沢牛 イチボ”をと、食べ比べていたら、150g ×3皿があっけなく胃袋に収まった!店内は、嬉々として肉を頬張る食いしん坊の活気でいっぱいだ。
軽々と食べ進められるステーキの秘訣は肉の質だけではない。シェフの渡邉大祐さんが、薪と炭の両方で巧みに焼き分けているからだ。この店ならスタンディング席で、サクッとワイン×ステーキを食べることもできる。こんなにもフレキシブルでラフなステーキの食べ方、今までありそうでなかったスタイルだ。
文:森脇慶子 写真:海老原俊之
※この記事の内容はdancyu2018年10月号に掲載したものです。