京都にある「大鵬」は大人気中華料理店。発酵食材を使い、厚みがあり美しい味わいの京中華とナチュラルワインが楽しめる、京都でしか味わうことのできないお店です。
貝のだしがじんわりしみたリゾットのような炒飯は、濃厚にしてヨーグルトのように爽やかな後味。聞けば調味の素は鮎の熟れずしの“飯いい”。深い旨味があり、冷めると味が締まり、これがまた旨い!ほかの料理も豚バラと鮒ずし、鶏のせせりと野菜の古漬け、ひよこ豆と海老みそ、と予測困難な組み合わせ。でも食すとクリアな旨味と深いコク、ほのかな酸味が口中でジワジワ広がる、まさかの中華なのだ。
この挑戦的な料理を出す「大鵬」は京都では誰もが知る町場の中華。先代が築いた大衆中華に二代目が新味を加え、新たな根を張らんとしている。「以前は四川の再現にこだわっていましたが、京都で中華を食べることの意味を考えるうちに、むやみに本場を追うのをやめました。きっかけは、いい造り手の発酵食品やナチュラルワインとの出合いです」と語る、二代目の渡辺幸樹さん。最近は日本の発酵食品も使い、鮎の熟れずしは岐阜県の「川原町泉屋」、鮒ずしは滋賀県湖北の「魚治」から取り寄せている。
「発酵の仕方が丁寧なので酸味も旨味もすっきりとしてきれいで、加熱しても臭みがないんです。どれもルーツを辿れば中国。中華に合わないわけがないですよね」。日本の発酵が京中華となり、ナチュラルワインのアテと化す。
文:西村晶子 写真:エレファント・タカ
※この記事の内容はdancyu2019年11月号に掲載したものです。