森下にある老舗喫茶店「カフェ・レストラン 鍵」では、ホテルの厨房を渡り歩いてきたという二代目の絶品アジフライが楽しめます。
吾輩は猫……ではないが、アジ好きである。干物や刺身に目がない。無論アジフライだって大好物だ。
いいアジフライは魚の自然な曲線が生きていて、尾がピンッと屹立している。大口を開けてガブッとかぶりつけば、サクッと衣が弾け、凝縮された青魚の食感がホクッとほどける。
こうした条件をすべて満たす「鍵」のアジフライは、誠実な一皿二尾だ。
創業は「50年以上前」。しかし二代目の矢田晴久さんが店を継いだのは2年前。それまでは30年間、ホテルの厨房を渡り歩いてきた。“アジフライ”も継いだが、レシピは長年のホテル歴の粋を注ぎ込んで新たにつくり上げた。
アジは身の厚い個体を選び、小骨やゼイゴは徹底的に処理。最後は塩と牛乳で臭みを取り、胡椒を効かせる。
手間のかかったこのアジフライ定食700円とは驚きだが、夜の単品は520円とさらなる仰天価格。
通し営業の洋食喫茶、ありがたい。
※現在はテイクアウトのみ営業中。
夜の単品メニューで登場するエビフライ990円。下処理で丁寧に筋を切り、ピンと伸びた姿が美しい。実は、店主の晴久さんは無類のエビフライ好き。他店でもエビフライを注文するとか。
文:松浦 達也 写真:岡本 寿
※この記事の内容はdancyu2019年10月号に掲載したものです。