明日、どこに食べに行こう?
鮮度抜群!下町に愛される魚屋のアジフライ「食堂 富水」|美味しいアジフライが食べたい!①

鮮度抜群!下町に愛される魚屋のアジフライ「食堂 富水」|美味しいアジフライが食べたい!①

定食のおかずのテッパンであり、酒肴としても、ビールやレモンサワーなどあらゆるお酒に寄り添う。あぁ、アジフライは素晴らしい!都内でも抜群なアジフライを食べられる店をご紹介します。

愛され続けている下町の鮮魚店

店内
揚げものの注文はひっきりなし。
外観
いかにも下町の鮮魚店といった風情の店構え。店頭では魚の切り身や刺身も販売。女将に今日のお薦めメニューを聞いてから、食堂の暖簾をくぐろう。

門前仲町――。木場に向かって永代通りの右側にはかつて料亭が並び、左側は今も富岡八幡宮の門前町だ。ここに町の人から長らく愛される食堂がある。富岡水産という鮮魚店に併設された店の名は「富水(とみすい)」。茶色の暖簾には、深川の2文字が家紋の横に染め抜かれている。
店内は広い。昼は定食目当てのお客さん、夜は飲む人もやって来る。迎えるのは、笑顔が素敵な女将だ。「築地で仕事を覚えたからね。魚のことなら、うん」と言って頷く。みなまで言うな。任せておきなさい、ということだ。

看板と女将
深川で店を始めて四十余年。女将の高倉良江さんは街の顔だ。店は魚屋であり食堂であり飲み屋。店内には幅広い客層が集う。

小さいのなら3尾、それより少し大きいのなら2尾。女将が両手の人差し指と親指の先を合わせた三角形は、名物、アジフライの大きさを示す。
皿にはフライとせん切りキャベツ、レモンスライスにタルタルソースがのる。衣は軽く、サクッと歯ごたえが良く、噛むと鯵の身が口の中でほくほくと躍るようにして、しっかりした質感も感じさせる。小ぶりの鯵だが、身はけっして薄くなく、ぷりっとしている。青魚特有のクセも少なく、爽快と言いたくなるような味わいだ。
もちろん、ビールを飲む。飲まざるを得ない。いやいや、飲まなくてもいい。ご飯を注文して、フライと頬張るのもまた抗いがたい誘惑だ。

刺身盛り合わせ
この日の刺身盛り合わせ1,620円(一人前)には、マグロ、カニ足、〆サバなどが並んだ(写真は二人前)。

店では鯵のほかにサーモンのフライも自慢の品なのだが、刺身や天ぷらの種類も豊富だし、焼いたウルメとかサバの味噌煮とかうな重とか、あれこれ、試したいものが目白押しである。
「深川へ来たばかりの頃は芸者さんも半玉さんもいてね。木場の旦那たちも羽振りが良かったから、それは賑やかだった。でも、今でもね、親子三代で使ってくださるお客さんもいるんです」
そりゃそうだろうな……アジフライを齧りまた納得。こんな店が近所にあれば毎日通うだろうと、頷くばかりだ。

アジフライ
鮮度抜群、身もプリッとしたアジフライ1,080円。以前は昼定食にもあったが、鯵の不漁で数年前から夜の単品のみで提供。

ワンモアフライ!

サーモンフライ

サーモンフライ1,080円も人気。一口食べて、サーモンの身質の良さに驚く。生臭さはまったくなく、脂がのった切り身を軽い衣がふわりと包み込んでいる。

店舗情報店舗情報

富水
  • 【住所】東京都江東区富岡1‐10‐3
  • 【電話番号】03‐3630‐0697
  • 【営業時間】11:00~14:00 17:00~21:00 土曜、祝日の夜は~20:00
  • 【定休日】日曜 他に不定休あり
  • 【アクセス】東京メトロほか「門前仲町駅」より5分

文:大竹 聡 写真:長谷川 潤

※この記事の内容はdancyu2019年10月号に掲載したものです。

大竹 聡

大竹 聡 (ライター・作家)

1963年東京の西郊の生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告会社、編集プロダクション勤務を経てフリーに。コアな酒呑みファンを持つ雑誌『酒とつまみ』初代編集長。おもな著書に『最高の日本酒 関東厳選ちどりあし酒蔵めぐり』(双葉社)、『新幹線各駅停車 こだま酒場紀行』(ウェッジ)など多数。近著に『酔っぱらいに贈る言葉』(筑摩書房)が刊行。