料理人やスタッフの元気の源まかない。東京・代々木公園にあるベトナム料理「ヨヨナム」のまかないには、一日のメインの食事になるよう気を使う、料理長・澤野ひとみさんの愛が溢れていました。まかないの調理場を覗き見します!
ヨヨナムのまかないは、和、洋、中、ベトナム料理とさまざまだという。遠くないところにある姉妹店のビストロ「mimet」から食材を分けてもらうこともあって、幅広い料理が登場する。
和では豚汁、中華では麻婆豆腐もまかないの人気メニューだとか。そんな中から、今日はベトナム料理だ。ベトナムの大衆食堂をコムビンザンといい、好きなものを選んで一皿にのせていくそうだが、今日のまかないもそのイメージ。いろいろな料理を並べ、自由に取るスタイルである。
ご飯はジャスミンライスと日本の米を半々にブレンドして炊いたもの。程よく親しみが出て、お店でのご飯ものにもこのスタイルで出すことが多いという。
おかずの“キャベツとコリンキー、サキイカのサラダ”と“春雨サラダ”は、今日のランチタイムのセットに付いた小鉢2品を多めに作っておいたもの。“大根とニンジンのなます”は、店のいろいろなメニューの付け合わせに使われる、いわば常備食。日本のなますの味に近いという。他にも“鶏の手羽先のイエローカレー”、“ピーナッツののったインゲンソテー”、“高菜炒め”、“トマトとしじみとディルのスープ”と本当に盛り沢山!
「いつも、品数は多いです。私も含め、働いているスタッフにとっては、このまかないが一日のメインの食事。特に、野菜をたくさん食べる機会は一日の中で他にないと思うので、意識してたっぷり入れています。まかない一食で30品目の食材を摂るのが目標です」と料理長の澤野ひとみさん。
まかないらしいな、と思うのはお客様に出す料理に使う野菜の「芯」と「茎」をとっておくことだ。たくさん出るレタスの芯をとっておいて、炒め物に。空芯菜やシャンシャイ、クレソンやせりなどの茎もストックしておき、炒め物に加えるという。今日なら、高菜の炒め物にたっぷり入っている。レモングラスの残ったものもとっておいて、これはなんと、和風のまかないのときに使うのだとか。刻んで、味噌汁や煮物に入れると美味しいそうだ。
和洋中、どんなまかないにも、ベトナム料理の香りはこっそり潜んでいる。
文:浅妻千映子 写真:青谷慶