スペシャリテとまかない~素敵なレストランの美味しい話~
「ヨヨナム」のスペシャリテ"クリスピーバインセオ"|スペシャリテとまかない④前編

「ヨヨナム」のスペシャリテ"クリスピーバインセオ"|スペシャリテとまかない④前編

レストランを代表するメニュー、スペシャリテ。東京・代々木公園にあるベトナム料理「ヨヨナム」には、ベトナム料理らしさと野菜を多用する店の特徴が見事に合わさった一皿がありました。スペシャリテに隠された、料理人の想いと誕生の秘密を聞いてきました。

お店でしか味わえない一品

スペシャリテは「クリスピーバインセオ」

クリスピーバインセオ
クリスピーバインセオ1,970円。

お皿からはみ出しそうな黄色いオムレツ状のバインセオと、緑の野菜たち。バインセオの縁や表面には勢いがあり、口にせずともパリッと焼き上がっているのがわかる。こっそり、この黄色い皮を開けて中を見てみると、しゃっきりとしたもやしがこんもりと入っている。玉ねぎに、海老や肉の姿も見える。

オープン当初からメニューにあるこの「クリスピーバインセオ」。米粉とターメリック、そしてココナッツミルクを入れて焼いた生地をフライパンに流したら、その上にもやしを中心とした野菜、自家製塩豚や海老を入れるという。それらが重石になることで、生地をバリッと仕上げることができるのだそうだ。

食べる時は、このバインセオをナイフで適当に切って、まわりにあるサニーレタスを手に取り、そこに包む。もちろん、香草やシソも自由に巻き込んで。そしてタレをつけて食べる。野菜の香り、米粉使い、包む楽しさ、タレの美味しさ。ベトナム料理らしさを感じる一皿でもあり、野菜を多用するこの店の象徴のようでもある一皿だ。

「バインセオは、ベトナム各地でいくつかタイプがあるようですが、これはホーチミンスタイル。大根とニンジンのなますがついて、ヌクチャムという、ヌクマムとライム、砂糖などを混ぜたタレで食べる。現地では生地がもっと薄いことが多いのですが、この店では少し厚さを出し、パリパリに焼いています」と話すのは、澤野ひとみシェフ。

左が料理長の澤野ひとみさん、右が店長の石井一也さん。
左が料理長の澤野ひとみさん、右が店長の石井一也さん。

ここ「ヨヨナム」には、ランチタイムやテイクアウトでも大人気の「たっぷり野菜のカリカリ和え麺」や、多くの人がオーダーする定番「生春巻きサイゴンスタイル」など、訪れたら食べたいものはいろいろあるが、ランチにもなく、テイクアウトにもできないのがこのバインセオ。出来立てのカリカリ感をしっかりと味わって欲しいからなのだろう。いや、スペシャリテのプライドでもあるかもしれない。

店は、線路沿いの民家を改装した一階。エントランスへのアプローチが秘密の小径のようになっていて、連れて行った人が皆、驚いてくれる。異国への旅、というには大袈裟だが、非日常の味わいはとても楽しい。

店内
2017年1月15日開店。夜は要予約。すべての料理は、料理研究家の植松良枝さんが監修している。
看板
テイクアウトは電話予約にて、10:30~20:30の受付。ランチは11:30~15:00のピックアップ、ディナーは17:00~21:30のピックアップ。

文:浅妻千映子 写真:青谷慶

店舗情報店舗情報

ヨヨナム
  • 【住所】東京都渋谷区代々木5‐66‐4
  • 【電話番号】03‐6407‐1545
  • 【営業時間】11:30-14:00(L.O.) 17:00-21:45(L.O.)
  • 【定休日】なし
  • 【アクセス】東京メトロ「代々木公園駅」、小田急線「代々木八幡駅」より各5分
浅妻 千映子

浅妻 千映子 (食ライター)

大学卒業後、3年間のゼネコン勤務ののち、ライターに。雑誌やweb等で活躍。料理研究家としてレシピ開発も。著書に『江戸前握り』『パティシエ世界一』(光文社新書)など、レシピ本に『浅妻千映子キッチン』(ぴあ)、『ほめられレシピ』(主婦と生活社)がある。『東京最高のレストラン』(ぴあ)の審査員。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。