十条にある「蒲田屋」には、揚げ物屋と言っていいほどバリエーション豊かな揚げ物おにぎりが並んでいます。ジューシーな具を使ったおにぎりはまるで小さな定食のようです。
店を覗いた瞬間、圧倒される。十条にある「蒲田屋」は常時40種類超のおにぎりが並ぶ、見ていて楽しいおにぎり屋さんだ。具は鮭、梅などの超トラッド系から「ここ揚げ物屋さん?」と思えるほど豊富な揚げ物おにぎりまで、毎日通っても飽きないバリエーションだ。
基本材料も常に吟味。時期ごとに旨い新米を仕入れ、海苔は瀬戸内産。これを二代目店主・添野勝利さんたちは型も使わずに同じ大きさに握る。無駄な動きはないのに躍動する握り姿は、ダンサー・イン・ザ・キッチンである。
とにかく、どれもご飯と具の相性が抜群。“真アジのフライ”は、衣がカリカリ、身はしっとりとしたアジに、ソース代わりの梅肉の酸味が絶妙。これに絶後の握り加減のご飯と海苔が相まって、まるで最高に旨い小さな定食のようなバランスのよさだ。それはご飯、海苔、具という三者が織り成すおにぎりの基本を押さえつつ、具で攻めているからこその妙技だ。
文:加藤ジャンプ 写真:牧田健太郎
※この記事の内容はdancyu2018年11月号に掲載したものです。