カメラマンが、いつかまた食べたい料理
すき焼き、ロースカツ定食、せき髄|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

すき焼き、ロースカツ定食、せき髄|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

カメラマンの福尾美雪さん。今、食べに行きたい、会いに行きたい料理はなんですか?と聞くと……。

福尾美雪さんが食べに行きたいのは――。

東京・浅草「おりべ」のすき焼き

東京・浅草「おりべ」スタッフ
東京・浅草「おりべ」のすき焼き
東京・浅草「おりべ」のすき焼き
何年か前に取材で伺ったのをきっかけに通っている、大切な人をお祝いしたいときに訪問するお店。古民家の二階に個室が二つあり、ここだけが客間なのでとても静かで誰かのおうちにお邪魔しているような雰囲気もまた良い。お肉はご主人の地元だという伊賀牛。この伊賀牛がさっぱりとしていて大変美味しい。最初に玉ねぎを焼いて、そこへお肉を乗せた状態でまずいただくのだがそのひと口目がすごーく美味しい。1ラウンド目のすき焼きはお母さんが作ってくれるスタイルなので、失敗することもないし、安心して待っている時間も好き。味は砂糖と醤油をかけて食べる関西のスタイルで、味にリズムがあって食べていて楽しい。満腹になって帰る頃には、「今度はヘルシーにしゃぶしゃぶをお願いしようかな~。」なんて思っているのだが、数ヶ月後の予約時にはやっぱりすき焼きを頼んでしまうのである。こんな風に一つの鍋をみんなでつつき合う文化が、どうかなくならないで欲しいと切に願う、今日この頃です。

東京・武蔵小山「もち豚とんかつ たいよう」のロースカツ定食

東京・武蔵小山「もち豚とんかつ たいよう」のロースカツ定食
東京・武蔵小山「もち豚とんかつ たいよう」のロースカツ定食
言わずと知れた名店ですが……食べたい。「たいよう」のロースカツが!!多少並んででも食べたい一皿です。まずは店主の丁寧な仕事ぶりが素晴らしい。肉一枚一枚に耳を傾けているかのようにトントンと優しく叩き、衣もふわっと優しくつけていく姿、「ああ、あの豚は幸せ者だな」とさえ思うのです。揚がったカツにサクッサクッと包丁を入れ、断面の火の入り具合を丁寧に確認されていて、真摯に豚と向き合う姿が印象的です。とにかく全ての工程が繊細で、所作が美しく惚れ惚れします。そしてカツを口に入れた時のサクッと感、さっぱりとした旨味、しっとりしていてほの甘い!もう悶絶です。最後まで食べ終わった後もお腹が重くなく、軽やか。とんかつって無性に食べたくなるけど、一度行くとしばらくいいかなと思ったりするんですが、ここは違います。またすぐにでも来たいと思えるとんかつ屋さんてそうないように思います。今はテイクアウトもやっているそうですが、やはり主人の作る行程を見ながら揚げたてをカウンターで食べたいですね。

イタリア・ミラノ「トラットリア トリッパ」のせき髄

イタリア・ミラノ「トラットリア トリッパ」のせき髄
店名の通り蜂の巣など内臓系の料理を得意とするミラノの人気店。中に入るとカジュアルな雰囲気。活気があって賑やかで何よりサービスのスタッフの楽しそうなこと。それを見ているだけで良いお店だなと確信しましたし、美味しいものが出てくる予感がしました。シンプルで素材を生かしたお皿が多かったですが、調理法が斬新な食べ方のものも多く。蜂の巣のカリカリに揚げたフリットも食感が良く美味しかったのですが、何と言っても衝撃的だったのはこれ。骨髄をグリルし、とろっとろの中枢部をスプーンですくってパンにつけて食べる……これがたまらなく美味しかったです。コラーゲンと旨味たっぷり、見た目はかなりハードですが後味もさらっとしていました。長旅でかなり疲労も溜まっていたところにこんなハードな食事、大丈夫だろうか、と思っていましたがお店の雰囲気も相まって逆に元気いっぱいになって帰った記憶があります。一刻も早く本来の明るく楽しいイタリアの姿が戻ってきますように……。頑張れミラノ!!この事態が収束したら必ずまた食べに行くよ!!

写真・文:福尾美雪