カメラマンが、いつかまた食べたい料理
魚の蒸料理、鮨、鯖鮨|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

魚の蒸料理、鮨、鯖鮨|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

カメラマンの小野田陽一さん。今、食べに行きたい、会いに行きたい料理はなんですか?と聞くと……。

小野田陽一さんが食べに行きたいのは――。

台湾・台北「梅子餐庁林森老店」の魚の蒸料理

台湾・台北「梅子餐庁林森老店」の魚の蒸料理
昨年の秋、台北にある「ponding」というギャラリーで、「静物画」という写真展をさせていただきました。デザイナーさんチーム(ampersands)と1年位かけてコンセプトを考え、写真集を作り、展示やイベントまでさせていただいた、とても思い入れのある展示です。写真展初日の夜、ギャラリーの仲介から写真展の告知、集客まで、とてもお世話になった方にギャラリー近くの台湾料理店に連れて行っていただきました。円卓を囲んで食べる台湾料理は本当に格別で、何より写真の魚蒸料理にはほっぺたが転げ落ちました。こんな幸せな事があっていいのか、そう思えた台湾での夜でした。落ち着いたら、必ず日本で巡回展を行い、また同じ仲間と食事をしたいと思います。

石川・金沢「木場谷」の鮨

石川・金沢「木場谷」の鮨
2年程前、薄氷で有名な「五郎丸屋本舗」のWEB SITEの撮影をさせていただきました。 撮影初日の夜、「五郎丸屋本舗」の社長に連れて行っていただいたお店が、金沢の「木場谷」でした。都内の名店で修行された大将が握るお鮨は、どれも口に入れた瞬間に北陸の海が広がり、そのまま溶けてなくなりました。何よりも嬉しかったのは、普段の業務に撮影の準備も加わり多忙だったにもかかわらず、なかなか予約の取れない名店を事前に予約し、片道30分以上かかる道を自ら運転して連れて行ってくださった、「五郎丸屋本舗」の社長の心遣いでした。そんな心遣いもあり、「木場谷」のお鮨の味がより一層忘れられません。

東京・目黒「kabi」の鯖鮨

ドイツ・ゲルスヴァルデ「Cafe zum Lowen」のカレー
時代の流行もありますが、年齢とともに発酵料理から目が離せなくなってきています。そんな折、目黒にある「kabi」が気になっていたのですが、とても人気なお店なのでなかなか予約が取れずにいました。今年の2月、家族の記念日にと、ようやく伺う事ができ、その洗練されたお店の内装、シェフやソムリエの振る舞い、何より独創的な日本料理の数々に感動してしまいました。写真は、器の右上にちょこんと置かれた鯖鮨だったのですが、こんなお洒落な鯖寿司なんてあり?と心の中で叫んでしまいました。

今、都内の飲食店はどこも営業を自粛せざるを得なく、「kabi」も店内での営業は出来ていないみたいなのですが、テイクアウト限定でオリジナルメニューを毎日SNSを通して販売したり、kabiを応援する方々がクラウドファンディングを立ち上げ支援するなど、この事態にも前を向いて頑張っている、周りからとても愛されているお店なのだなと感じました。

飲食店だけでなく、フリーランスで仕事をしている自分にも言える事ですが、
こういう時に、何をするのか、周りからどう見られているのか、
お店や人、そのものの本質が問われている気がします。

1ヶ月後か、半年後か、もしかしたら1年後にになるかもしれませんが、必ずまた来店したいと思います。

写真・文:小野田陽一