僕が死ぬ前に食べたいのはコレ！｜編集長・植野の食日記　4月28日（火）

高知から届いたトマトで“パン・コン・トマテ”

この連載の第一回目でも書きましたが、僕が自分のことをカタルーニャ人だと思っているのは、当地の伝統的家庭料理パン・コン・トマテが好き過ぎて、死ぬ前に食べたいのはコレ！と思っているからです。パンに生のトマトをすり込んで、オリーブオイルをかけるだけの超シンプルな料理なのに、素材やつくる人によって味わいがまったく違ってくる不思議な食べ物でもあります。同じ味噌と具材で味噌汁をつくっても、味が異なるのと一緒ですね。

先日、高知の知人からトマトが届きました。甘味と酸味のバランスが素晴らしく、適度な硬さもあります。そのまま食べても美味しいのですが、カタルーニャ人である僕は、もちろんパン・コン・トマテにしました。

パン・コン・トマテを日本でも出す店があるのですが、正直、ちょっと違うものが多いですね。専用のパンやトマトを売っている現地と同じ味にするのは難しいのですが、僕がカタルーニャ人、ホセに教えてもらった日本でもできるつくり方はこんな感じです。

①　パンはチャバタかバタールを用意（バゲットよりも中が密になっていて、かつ軽やかなもの）。
②　トマトは小さめで甘過ぎず、酸味と甘味のバランスがよくてやや硬めのものを用意。
③　パンはカットせず、塊のままオーブントースターで温める（焦げないように）。中が温かくなるくらい。
④　厚さ2cm程度にカットする。
⑤　トマトを半分にカットして断面をパンにこすりつけるように塗る。
⑥　オリーブオイルをかける。
⑦　少し塩をふる。
⑧　出来立てをすぐに食べる。

最初ににんにくをこすりつける場合もあるのですが、美味しいトマトが手に入ったら、トマトだけの方が僕は好きです。
そして、高知のトマトでつくったパン・コン・トマテは……美味しかった！カタルーニャ人も満足です。

バルセロナなどではもっとサクッとしたパン（クリスタル・パン）を使う店が増えていますが、僕はしっとりしたパンを使う昔ながらのスタイルのものが好きなのです。
そもそも、パン・コン・トマテは日にちが経って硬くなったパンを柔らかくするために……話が長くなるので止めておきますが、とにかく、パン・コン・トマテが好きだー！

※カタルーニャはスペイン北東部の州。州都はバルセロナ。「いろんなことをカタルーニャ」とテレビの収録などでも言いまくっているが、たいていカットされます（でもカタルーニャの言葉は「カタラン」と言います）。今はスペイン各地でパン・コン・トマテを食べますが、かつてはカタルーニャだけのものでした。以前、ホセからこう言われました。「もし、植野さんがスペインで道に迷ったら、家を見つけて中を覗いてみて。パンにトマトをこすりつけている人がいたら、そこはカタルーニャだから」。