萬田康文さんの青春18きっぷで東北マンダラ旅。縁が円を描くのだ。
米沢から鶴岡へ。流れゆく夕景がこの世と思えないくらいに美しい。

米沢から鶴岡へ。流れゆく夕景がこの世と思えないくらいに美しい。

5時6分の始発で上野を出発し、福島で昼食を取り、米沢へ。車内に射す生まれたてだった太陽の光は、すでにだいぶ西の山に傾いてきた。確実に北へと移動していく感覚。いつもと違う時間を過ごす青春18きっぷの旅。車窓の景色を見ながら想う、この旅の目的とは?

山々と田んぼに囲まれた内陸部を北上する。

徐々に目的地の山形・鶴岡が近づいてくる。
米沢で13時40分発の山形行きに乗り換える。
列車は遠くに両側を山々に挟まれて内陸部を北上する。稲刈りが終わった田んぼの向こうに山が並々と続く様は見飽きない。

田んぼ

平野部では雪が見えず。この冬は今のところ雪が少ないようだ。車窓からの景色を見たり、コトウで購入した本を読んだり、うとうとしていると山形駅に。

本
本

いつもと違う時間を過ごすだけで、随分見える景色が違う。

14時52分発の新庄行きにもスムーズに乗り換えられた。
山形駅を出ると太陽がだいぶ西の山に傾いて来ている。新庄に着く頃にはもう隠れてるだろう。
思えば昨日は冬至。そうだ銭湯は柚子風呂だった。
列車はさらに北へ向かう。新庄に向かう途中に山裾を通るので、また雪景色になる。
流れゆく、夕焼けと雪の光景がこの世とは思えないくらいに美しい。
普段体験できない出来事やものに刺激を受け、眠っている自分の心情や、すでに持っているものの価値に別の角度から気づかされるのも、旅の目的のひとつだと思う。
18きっぷでいつもと違う時間を過ごす、それだけで随分見える景色が違う。

最後の電車に嬉しい気持ちと少しの寂しさが混じった。

16時7分、新庄駅着。昏れなずむ駅構内を移動して、酒田行きに乗り換える。列車は日本海の方角に進路を取る。

列車

これから暗くなるのは、あっという間だ。いくつになっても知らない土地を旅していて、日が暮れるのは心細くなる。
無力だった子どもの頃を思い出したりもする。列車はかすかに日の名残りが残る薄闇の中を走る。
ポツリポツリと遠くに見える街灯だけが見える。

最終9回目の乗り換えの余目駅には予定通り16時58分着。
ここでは38分の待ち時間がある。

雨がポツポツ降っている。マツーラさんから教えてもらっていた、駅の近くにある庄内町新産業創造館クラッセの売店で名産品をウロウロ物色。
ゴールの鶴岡は目の前だし、車内で乾杯するかと地ビールを購入。駅の待合室に戻る。
待合室では学生もそうでない人たちも静かに自分の乗るべき列車の時間を待っていた。我々も待つことにも随分慣れて来たと思う。

17時37分、羽越本線新津行きがホームに入ってくるのが見えると、最後の電車に嬉しい気持ちと少しの寂しさが混じった。
列車に乗り込み、ビールの栓を開けて乾杯。お疲れさまでした。

17時52分、旅の感傷に浸るまもなく列車は15分で鶴岡に到着した。
鶴岡にも雪はなく、雨あしだけが強くなっていた。

鶴岡駅

――つづく。

文・写真:萬田康文

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萬田 康文

写真と釣りと料理と長風呂がどうしてもやめられない、奈良生まれのロスジェネ世代。春夏は渓流を彷徨うべく釣竿とカメラを手に旅をし、秋冬は東京の暗室に籠ってプリントをつくり、春夏秋冬チラホラと来る仕事で糊口をしのぐ生活。2010年より写真家・大沼ショージと東京・駒形に写真事務所カワウソを開く。著書に『イタリア好きの好きなイタリア』(文・松本浩明/写真・萬田康文 イーストプレス)、『酒肴ごよみ365日』(カワウソ 萬田康文・大沼ショージ 誠文堂新光社)夢は北海道で“喫茶軽食釣具”の店を開くこと。名前はもちろんカワウソ。