佐渡観光。
佐渡の人がこぞって薦める「大崎そばの会」ってなんだ?

佐渡の人がこぞって薦める「大崎そばの会」ってなんだ?

そば、ソバ、お蕎麦!あなたのお好きなそばはどんなでしょうか?江戸の老舗でそば前ともりそば。真夏に熱燗飲んで、フウフウいいながらすするかけそば。はたまた、朝の通勤途中に駅のホームでコロッケそば。深夜2時にアー、食べちゃった、どん兵衛、マルちゃん、しかも大盛り。ボクたちの人生におけるそばとの出会いと関わりは本当にさまざまな形がありますね。金山が栄え、世阿弥が配流され、農作業と芸能が密接に結びついている歴史を持つ佐渡島。その山間にも素敵なそばと人の出会いがありました。

「おいしいよ~、楽しいよ~!」と薦められた「大崎そばの会」は、何が特別なんだろう?

2019年の夏。dancyu webオリジナルの「d酒」造りの取材と撮影で佐渡に1週間ほど滞在し、島のいろんな方と話をする機会があったのだが、会う人会う人、皆さん口を揃えて「実はね、佐渡はね、冬がいいんだよ~!」とおっしゃる。

寒ブリをはじめとする日本海の海の幸はもちろんすばらしいに違いないのだが、その冬の佐渡の魅力の筆頭として多くの人から「おいしいよ~、楽しいよ~!」と薦められたのが「大崎そばの会」なのである。
羽茂大崎(はもちおおさき)という地区の皆さんが穫れたてのそばを打って、客人に振る舞う会であるという。おいしい新そばと手づくりの郷土料理。
そして料理を堪能したあとには、佐渡でしか体験できない特別な時間も待っていると。

え、いったい何が特別なんだろう?

「大崎そばの会」の会場大崎活性化センターの約180席は、事前予約で完売だった……!

11月最後の土曜のお昼前。ジェットフォイルで両津港に着くや、レンタカーで羽茂大崎を目指す。
羽茂大崎というのは佐渡の南部、海沿いの旧羽茂町の市街地から羽茂川の上流5kmに位置する自然に恵まれた山間の集落で、主産業は米、野菜、そば、そして柿などを生産する農業である。この集落は古くから芸能の村でもあって、住人によって能や文弥人形(ぶんやにんぎょう)などの伝統芸能が脈々と伝えられているのだ。

1時間ほどクルマで走って到着した会場の大崎活性化センターのロビーは、正午から始まる会を待ちわびる人で溢れ返っている。みんなこの時を本当に楽しみにしていた、という幸せそうな顔があふれている。地元の人も、佐渡のほかの地区の人も、いろんな場所からやって来た観光客の人達も。

青菜の胡麻和え、かぼちゃの煮物。野菜のささげに似た果実を煎じたきささげ茶。

この日は184名の予約が入って満員御礼。受付のあと、決められた席番号が振られた大広間に入るとテーブルの上にはすでに、滋味深い地元の食材のみを使った煮物、天ぷら、芋煮、青菜の胡麻和え、おにぎりなどなど、おいしそうな食べ物が所狭しと待ち受ける。
前菜、おかずを食べながらそばが運ばれて来るのを待つのである(あまりのおいしさにここで食べ過ぎるとおそばが入らなくなってしまうので、そこだけは気をつけてくださいね!)。

地元産の食材の煮物。湧水の豊富な佐渡島は厚揚げなど豆腐類も美味!
新じゃがの甘辛い煮ころがしに、佐渡産のお米を炊いたつやつやのおにぎりに漬物。これがそばが供される前に並んでるんだから、つい食べ過ぎちゃいます……!
甘酒は米粒の形がしっかりわかるほどの米麹でつくられたもの。

客席の前方にはまだ幕が降ろされたままのステージがあって、その前には飲み放題の甘酒ときささげ茶。なんだか懐かしい雰囲気に包まれ、この部屋に集った人たちが、みんな親戚のようにも思えてくる。

おばあさん、お母さんたちが一所懸命にそばを打つ。

会場後方の調理室から忙しそうな話し声とともに、そばとだしの香りが漂ってくる。
ちょっと覗いてみると、うわ~、活気あるなあ!
おばあさん、お母さんたちが一所懸命にそばを打ち、打ち上がったそばをゆでて器に盛りつけ、配膳用のお盆に次から次へと並べていく。
それを受けとった男たちは会場に運び続ける。
なんと皆さん、この日は朝7時30分から40kgものそばを打ち続けているという。

大崎地区を中心に、羽茂エリアでつくられたそば粉で打つ十割そば。だしはトビウオの節で取るあごだしのぶっかけスタイル。
調理室でそば打ちに励むのは女性たちばかりだった。
力づくではなく、楚々とした動きに見えるのにしっかりそばが伸されていく。
大きな釜で次々にゆでられた、締め立てそばが丼に次々と盛られる。
刻みねぎをのせてつゆをかけて。さあ、そばを待つ客席へ。
「待ってました!」「打ち立てそばを召し上がれ!」

びっくりすることに、この会、そばは好きなだけ、の食べ放題。食べてる器が空になって、おかわりをしたい人は挙手していると、はーい、今行くからねとお代わりをどんどん持って来てくれる。

お酒は供されないですが、持ち込み自由でロビーでは金鶴のカップ酒も売ってます。
3杯目のそばをどうしようかな、と思っているタイミングで、おいしいデザート、きび団子の善哉まで登場します。

もっちりとしたきび団子の善哉。小豆の炊き方も甘さの味付けも絶妙!

いやあ、美味しいなぁ、お腹一杯になったなぁ、飲んでいる人はちょいといい気分に酔っぱらってきたかしら、という頃合いで、スルスルスルッと幕が開く。
おー、これが噂の……!

場内の様子
まだ食べられる人は手をあげて。すると、おかわりが運ばれてきます。

――つづく。

文・写真:大森克己

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大森 克己(写真家)

1963年、兵庫県神戸市生まれ。1994年『GOOD TRIPS,BAD TRIPS』で第3回写真新世紀優秀賞を受賞。近年は個展「sounds and things」(MEM/2014)、「when the memory leaves you」(MEM/2015)。「山の音」(テラススクエア/2018)を開催。東京都写真美術館「路上から世界を変えていく」(2013)、チューリッヒのMuseum Rietberg『GARDENS OF THE WORLD 』(2016)などのグループ展に参加。主な作品集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『サナヨラ』(愛育社)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー)など。YUKI『まばたき』、サニーデイ・サービス『the CITY』などのジャケット写真や『BRUTUS』『SWITCH』などのエディトリアルでも多くの撮影を行っている。