「Shinfula」10個のケーキ。
濃茶のガトーショコラ|「Shinfula」のケーキ⑥。

濃茶のガトーショコラ|「Shinfula」のケーキ⑥。

中野慎太郎シェフがつくるケーキは、実に独創的なビジュアル。まるで近代的な建築物のような形をしたケーキは、しっとりとした滑らかな口当たりのガトーショコラだ。凛とした佇まいからは、誰もその味わいは想像できないだろう。

見たことのないガトーショコラ。

深緑色をしたキューブ型のガトーが三つ、幾何学的に並んだフォームはモダンながら、どこか和菓子の六方焼のようにも見える。
まずはひと口。瞬間、ふわっと香る抹茶の風味に思わず目を見張った。

ケーキ
「濃茶のガトーショコラ」610円。オブジェのようなビジュアルに、硬い質感を想像するがフォークを差し込むとしっとり柔らかな生地に驚くはず。

口当たりはあくまでも軽く、それでいて舌にしっとりと広がるクリーミーな食感がたまらない。後には抹茶の濃厚な残り香とほろ苦さが、鼻腔を抜けていく。体を包み込むかのような馥郁な抹茶感、これこそ中野慎太郎シェフが「濃茶のガトーショコラ」に求めていたものなのだろう。
実現するために工夫を凝らしたのが、ベースとなるチョコレート。ありがちなホワイトチョコレートに抹茶を入れただけでは、ここまでの抹茶の香りは引き出せない。そこで、目をつけたのが明治製菓の製菓用チョコレート。彩味シリーズの抹茶味である。

ケーキの断面
上から抹茶風味のサブレ、生クリーム、抹茶のガトーショコラ。

「今まで彩味は使ったことがなかったのですが、試食してみたら思いのほか良かった」

自分の舌で納得したものは、臆せず取り入れる――そんな中野シェフの柔軟性もまた、彼の菓子づくりを特微づけるひとつの鍵かもしれない。
さらに、チョコへ加える抹茶も厳選。茶道三千家も御用達の老舗茶舗、京都「柳桜園」の“綾の森”を使用している。この抹茶は、石臼で碾いているため香りの立ち方が驚くほど華やかなのだ。

焼き型
特徴的な型に生地を流し込み、じっくりと蒸し焼きにする。

一方、生地のベースは、従来のガトーショコラ同様小麦粉とバターと卵。だが、そこに加えるメレンゲの混ぜ方が独特だ。
「メレンゲの泡感がなくなるまで、延々と混ぜるんです」
こうすることで、理想のしっとりした生地が生まれるわけだ。火入れにしても、卵に火が入ればOKというぐらいの弱火で蒸し焼き。
小麦粉の量も形を保つ最小限と、すべては冷たくても柔らかいガトーショコラをつくりたいがため。中野シェフの想いがこもった佳品である。

――明日へつづく。

店舗情報店舗情報

Shinfula
  • 【住所】埼玉県志木市幸町3-4-50
  • 【電話番号】048-485-9841
  • 【営業時間】11:00~19:00
  • 【定休日】月曜、不定休
  • 【アクセス】東武東上線「志木駅」より16分

文:森脇慶子 写真:馬場敬子

keiko_moriwaki_.jpg

森脇 慶子(ライター)

高校時代、ケーキ屋巡りとケーキづくりにハマってから食べ歩きが習慣となり、初代アンノン族に。大学卒業後、サンケイリビング新聞社で働き始めたものの、早々に辞めて、23歳でフリーとなり、食専門のライターとして今に至る。美味しいものには目がなく、中でも鮎、フカヒレ、蕎麦、スープをこよなく愛している。