インポーター「ノンナアンドシディ」との友情と計らいにより、今シリーズにもたびたび登場したワイン、「PHEASANT’S TEARS(フェザンツ・ティアーズ)」「OKRO’S WINE(オクロズワイン)」「Lagazi(ラガジ)」の造り手が、2019年10月に来日した。またとない機会に、甕で醸す古来の製法のジョージアワインを造る悦び、そのアイデンティティを訊いた。
2019年10月、ヨーロッパとアジアの間に位置するジョージアから、ジョージアワインの造り手3人が来日した。
「PHEASANT’S TEARS(フェザンツ・ティアーズ)」のジョン・ワーデマンさん、「OKRO’S WINE(オクロズワイン)」のジョン・オクロさん、「LAGAZI(ラガジ)」のショータ・ラガジさんの3人だ。
彼らは「クヴェヴリ」という土に埋めた甕でワインを醸しており、それは「クヴェヴリワイン」の名で親しまれてきた。果皮ごと漬け込む製法によってオレンジ色に仕上がることから、「オレンジワイン」あるいは「アンバーワイン」も呼ばれている。
去る10月30日には、インポーター「ノンナアンドシディ」の主催で、造り手によるレクチャーと試飲会が東京・六本木「国際文化会館」で開催された。
実は、この会は1本のメールからスタートした。
「夏頃、ジョンから『秋に日本へ行く』って書かれたメールが届いたの」と「ノンナアンドシディ」オーナーの岡崎玲子さんは振り返る。岡崎さんは彼らのワインを扱うインポーターで、公私にわたって深い交流がある。
「ジョンは日本が大好きなの。私にも会いたいので、『オクロズワイン』のオクロと、『ラガジ』のショータも連れていくからって。せっかく彼らが日本へ来てくれるのなら、ジョージアワインのことを多くの人の前で語ってもらえないかしらってジョンにお願いしたの」
岡崎さんはジョンさんのベストフレンド。
ベストフレンドたっての頼みで、ジョンさんはふたつ返事でレクチャーを引き受けてくれた。
当のレクチャーでジョンが語ったのは、ジョージアワインの歴史や製造法。自分のワインのPRを一切しなかった。「自分のワインを飲んでくれ」とも「自分が造ったワインは旨い」とも言わなかった。
では、何のためのレクチャーだったのか。
この記事を読んでいただければご理解いただけると思うが、3人は“ジョージアワインの親善大使”のごとく、8000年の歴史、文化、ワインへの思いを熱く語ってくれたのだった。
通訳と解説に、このシリーズの初回でジョージアの歴史や地理を教えてくれた、首都大学東京(東京都立大学)人文社会学部教授・プリンストン大学客員研究員の前田弘毅さんが参加。
造り手の声が聞けるまたとない機会に、甕で醸すワインを造る悦び、彼らにとってワインはどんな存在なのかを訊いた。
――どんなときにワインを造っている悦びを感じますか?
――クヴェヴリでワインを造るアイデンティティとは?
――ジョンさんは、公開中のドキュメンタリー映画『ジョージア、ワインがうまれたところ』(原題『Our Blood Is Wine』)に出演していますね。映画のエピソードがあれば教えてください。
――ジョンさんはワイナリーの共同経営者、ゲラ・パタリシュヴィリさんとともに撮影に立ち合いましたね?
――つづく。
文:中島茂信 写真:オカダタカオ