伝統的な和食の美味しさが堪能できる店から、店主のセンスでジャンルを意識しない使い勝手のいい空間など、 東京の和食店はスタイルが多様化しています。進化を続ける和食の「いま」を知るために、行っておきたい良店へご案内――。
さまざまな料理が違和感なく共存する食都”東京”。それを体現するかの如き一軒が、ここ「SHIGEtei(シゲテイ)」だ。
神楽坂の路地奥にひっそりと佇むその扉を開けると、コの字カウンターが広がり、店主の長野成宏さんが一人で迎える。壁にかかる手書きの黒板に目をやると、ワンオペとは思えないバラエティーの豊かさに心が躍る。鯵やイサキなど旬の魚の刺身があるかと思えば、ヒレカツサンドあり、ボロネーゼありの楽しさ!純和風な料理から洋の一皿までがずらりと並び、食いしん坊魂をこれでもかと刺激する。
また、マヨネーズ代わりに黄身酢を使ったタルタルソースでいただくアスパラガスのように、和洋を巧みに組み合わせた一品もここならでは。洋の皿でも日本酒に合うようにと、黄身酢には追い鰹で和の旨味を足し、ボロネーゼのミートソースには仕上げに醤油を少々。さりげない一手間一手間に、長野さんのセンスの良さが窺える。
コースオンリーの店が多い昨今にあって、アラカルト中心ゆえ、その日の気分で好きに頼めるのもうれしい限り。これほど気ままに食事を楽しめる店は、東京広しといえどなかなかない!
文:森脇慶子 写真:木村心保