オレンジ色のじんわり系「ジョージアワイン」ってなんだ?
ジョージアワインと"銀だらの西京焼"と"甘鯛のお椀"。

ジョージアワインと"銀だらの西京焼"と"甘鯛のお椀"。

東京は渋谷にある割烹居酒屋「酒井商会」で、ジョージアワインと共に“焼穴子サンド”と“雲仙ハムカツ”を味わった。その相性のよさに驚くばかり。次はオーソドックな和食として"銀だらの西京焼"と"甘鯛のお椀"をリクエストした。

銀だらの脂気、酒粕と麹の旨味がワインを呼ぶ!

オーソドックスな和食とジョージワインを合わせてみたい。
そうリクエストすると「酒井商会」店主の酒井英彰さんが提案してくれたのは、"銀だら酒粕西京焼"だった。
「銀だらは酒粕と西京味噌に漬け込んでいます。脂ののった身に、酒粕と麹の旨味がしっかりしみこんでいます。その脂気と酒粕などの旨味がジョージアワインと合うと思います」

酒井さん、大正解!
ジョージアワインは肉の脂だけでなく、魚の脂とも相性がいいようだ。

銀だら酒粕西京焼
しっかり脂ののった分厚い身の銀だら酒粕西京焼。
ジョージアワインは、グラスで1,2種類、ボトルを合わせて5種類ほどを用意している。

だしのミネラル感と相乗。

なにはともあれ和食で外せないのは、お椀である。
はたして、だしとジョージアワインはマッチするのか。
今日は、甘鯛と冬瓜のすりながしのお椀があるという。

「酒井商会」店主の酒井英彰さん。カウンター中心のライブ感のある店内で料理を提供する。

供されたお椀には、枕崎産の鰹節に昆布でとっただしの冬瓜のすりながし。揚げた甘鯛とレタス。おこげも入っている。
甘鯛を食べ、だしを味わいながら、ジョージアワインを飲んだ。
違和感がないどころか、相思相愛。
ジョージアワインは脂っぽい料理だけでなく、お椀のような繊細な和食とも合うのか。
箸を入れた甘鯛から脂気や旨味がだしにしみ出してくるほどに、ワインと相乗する。
私は蒙(もう)を啓(ひら)かれた。
なぜそうなるのか、まったく説明がつかない。けれど、癖のあるジョージアワインがお椀の美味しさを引き出していることはまぎれもない事実だった。

甘鯛と冬瓜のすりながしのお椀
甘鯛と冬瓜のすりながしのお椀。食べ進めるほどに、だしや揚げた甘鯛の旨味がひたひたとしみ入る。おこげの香ばしさもいいアクセントに。

酒井さんはこう読み解く。
「キーワードはミネラル。だしの材料の昆布と鰹節は海産物です。かたや、ヨーロッパのワインに含まれるミネラル分は、太古の昔、海底だった石灰質土壌に由来します。つまり、ジョージアワインにもだしにもミネラルが含まれています。だしとワイン。まったく異質なものですが、相性がいいのではないでしょうか」

酒井さん

このペアリングを、ワイン担当の城戸美貴子さんはどう分析するのか。
「ジョージアワインの中には、だしのニュアンスをもつ味わいのものがあります。ミネラル分が強いのかもしれませんね。そういったワインを選べば、だしを使った料理とも合うんだと思います」
城戸さんによれば、ジョージアワインには酸味を含んだものが多いそうだ。酸味のあるジョージアワインを飲みながら、酸味のないお椀を味わうと、ワインが欲しくなる。お椀を食べると、今度はワインが飲みたくなる。
「ジョージアワインとお椀が影響しあい、エンドレスで欲しくなります(笑)。私自身うちの店でいろいろなペアリングを試してきましたが、洋食よりも和食のほうがジョージアワインに合う料理が多いと思います」

城戸美貴子さん
ワインを担当する城戸美貴子さん。ワイン選びに迷ったときの頼もしい存在だ。

ご飯ものを頼むのなら、ジョージアワインにはどんな組み合わせがよいか城戸さんに訊ねた。
「うちの料理だと、ごぼうと揚げ穴子の土鍋ごはんが、『PHEASANT'S TEARS(フェザンツ ティアーズ)』と合うと思います。ごぼうはご飯と一緒に炊き込み、ご飯が炊けた後、揚げ穴子を入れます。ごぼうの土っぽさと、同じニュアンスをもったワインが合うのではないでしょうか」

ご飯は〆に食べるものだと認識している。ワインに限らず、ご飯を食べながら酒を飲んだことがないので、ジョージアワインと土鍋ごはんが合うのかどうか、まったく想像できない。
でも、“焼穴子サンド”とドレミが合うのだから、揚げ穴子を使った土鍋ごはんもきっと美味しく食べられるに違いない。

昆布の佃煮とジョージアワインが合うのなら、昆布の佃煮のお茶漬けもいいのではないか。
だしを使ったお雑煮とも合うかもしれない。
お節などの正月料理とジョージアワインのペアリングも試してみる価値がありそうだ。
「洋食より和食のほうが、ジョージアワインとの相性がいい料理が多い感じがします」という城戸さんの言葉がとても新鮮で、心に響いた。
うな重、天丼、だし巻き卵におでん……。和食とジョージアワインの組み合わせには無限の可能性がありそうだ。
酒井さんの料理をジョージア人に食べさせてみたい。ワインを飲んだ彼らの反応を見てみたい。そんなことをつらつらと考えながら、帰路についた。

――つづく。

店舗情報店舗情報

酒井商会
  • 【住所】東京都渋谷区渋谷3‐6‐18 荻津ビル2階
  • 【電話番号】070‐4470‐7621
  • 【営業時間】16時~23時(土曜14時~21時)
  • 【アクセス】JR・東京メトロ・東急井の頭線「渋谷駅」徒歩10分

ジョージアワインの9人⑤⑥

酒井英彰

酒井英彰(さかい・ひであき)

1984年福岡県福岡市生まれ。大学卒業後、オーストラリアのフレンチレストランに就職する。帰国後、神奈川の「三笠会館」でフレンチに従事。その後5年間、外食チェーンで研鑽を積む。割烹と吟味した日本酒を愉しめる、東京・渋谷「並木橋なかむら」、渋谷「高太郎」を経て、2018年4月に「酒井商会」を開業する。

城戸美貴子

城戸美貴子(きど・みきこ)

熊本県玉名市生まれ。アパレル業界からオーストラリア人が営む渋谷のレストランに転職。その後、オーストラリアの屈指のワインの産地、アデレードのワイナリーで職を得る。帰国後、東京・原宿のフレンチ「kiki」でサービスを担当。和食とワインに惹かれ、「酒井商会」に入店。現在に至る。

文:中島茂信 写真:オカダタカオ

shigenobu_nakajima.jpg

中島 茂信(ライター)

1960年、東京都葛飾区生まれ。4歳の頃、亀戸天神の近くにあった「田久保精肉店」のコロッケと出会って以来コロッケ好き。趣味はラードで揚げたコロッケの買い食い。最後の晩餐はもちろんコロッケ。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』(枻出版社)、『101本の万年筆』(阪急コミュニケーションズ)、直木賞作家の山口瞳さんの妻である治子さんの聞き書き『瞳さんと』(小学館)、『自家菜園レストラン』(コモンズ)など。企画・編集に『笠原将弘のおやつまみ』(ぶんか社)、『平翠軒のごちそう宝箱』(小学館)がある。