TOKYO蕎麦めぐり。
旬の味を練り込んだ変わり蕎麦で四季をたぐる。

旬の味を練り込んだ変わり蕎麦で四季をたぐる。

江戸三大蕎麦のひとつ、麻布十番「総本家 更科堀井」には看板の“更科蕎麦”に加えて、四季の移ろいを楽しめる粋な名物メニューがあります。

“季節の変わりそば”は期間限定メニュー!

見た目も味わいも上品な“さらしな”に季節の旬を投影したのが“季節の変わりそば”。3通りの美しい蕎麦から、ほしひかるさんとNOMAさんは何を感じ取るのでしょうか。

東京の蕎麦をめぐるふたり

ほしひかる

ほしひかる

佐賀県佐賀市出身。豊かな知識とわかりやすい解説でビギナーからツウまで幅広く支持される、蕎麦界の博覧強記。偏愛蕎麦屋は両国「江戸蕎麦 ほそ川」。江戸の蕎麦の通人を表す民間の資格「江戸ソバリエ」認定委員長であり、深大寺そば学院講師や「武蔵国そば打ち名人戦」審査員も務めている。共著に『休日の蕎麦と温泉めぐり』『江戸蕎麦めぐり』(ともに幹書房)がある。

NOMA(ノーマ)

NOMA(ノーマ)

佐賀県佐賀市出身。ファッション雑誌からラジオのパーソナリティまで幅広いジャンルで活躍中の人気モデル。生態学者である日本人の父とシシリア系アメリカ人の母を持ち、佐賀の大自然に囲まれて育つ。ライフワークは蕎麦と植物と宇宙。江戸蕎麦は原宿「玉笑」と両国「江戸蕎麦 ほそ川」がフェイバリット。蕎麦打ちにも興味津々。VOGUE JAPAN WEBで「モードな植物哲学。」を連載中。TOKYO FM「東京プラネタリー☆カフェ」でパーソナリティを務める。

ほし
「総本家 更科堀井」でNOMAさんにぜひ食べていただきたかったのが、“季節の変わりそば”。先ほどいただいた“さらしな”に、旬の食材を練り込んだ季節限定メニューです。数日おきから1ヶ月くらいのペースで、ときどきの変わり蕎麦を1種類楽しめるのですが、今日は特別にいくつか用意してくださいましたよ。
NOMA
変わり蕎麦と言えば、“けし切”“青じそ切”“桜切”などをイメージしますが……いったいどんなものに出合えるのかワクワクします。
堀井社長
堀井社長
“青柚子切”“菊切”“くこ切”の3つをご用意しました。それぞれ9月1日~21日、9月22日~10月9日、10月10日~31日に登場しました。
青柚子切
爽やかな柚子が心地良く香る“青柚子切”1,070円は初秋(9月1日~21日)に登場。
ほし
“青柚子切”は柚子らしい爽やかな香りがたまりません。
NOMA
蕎麦の繊細な味わいはそのままに、柚子が優しく香るのが好みです。“菊切”は美しい黄色。菊の花の色なんですね。
堀井社長
食用菊の花びらをミキサーにかけてペースト状にして、蕎麦に練りこんだものです。菊のほのかな香りを楽しんでいただければ。
ほしさんとNOMAさん
ほし
くこの実を練り込んだ“くこ切”は優しい甘みがじわりときますね。
NOMA
かわいらしいオレンジ色で、ほんのり甘くて食べやすいホッとするお蕎麦です。
堀井社長
お子さんに人気で、うちの息子も小さい頃は大好きでした(笑)。
菊切
“菊切”1,070円は食用菊の上品な香りと味をほのかに感じる繊細な世界。提供は9月22日~10月9日まで。
くこ切
噛むほどに優しい甘さがじわりと押し寄せる“くこ切”1,070円。10月10日~10月31日まで。

季節の味は何種類?

NOMA
変わり蕎麦はいつ頃からあるのですか?
堀井社長
江戸時代中期にはすでに、卵を練り込んで打った変わり蕎麦の定番、“卵切(らんぎり)”がありました。色が鮮やかに出るので見た目にも楽しめたんですね。水や湯を使わず卵をつなぎ代わりに打つ。卵がたくさん必要になるため、当時は高級品でした。
ほし
白い蕎麦では飽き足らず蕎麦に風流を求めた、というのが粋ですね。遊び心が大好きな江戸っ子たちはさぞ珍しがったことでしょう。ちなみに昭和初期には「変わり蕎麦を食べる会」という研究会が蕎麦業界にあったようですよ。
NOMAさん
NOMA
“季節の変わりそば”は22種類あるそうですが、ほかにどんなものがあるのですか?
堀井社長
“桜海老切”“柚子切”“菊切”“ふきのとう切”“桜切”“木の芽切”“茶そば”“よもぎ切”“紅花切”“蓼切(たでぎり)”など……ほぼ隔週のペースで入れ変わっていきますが、どの蕎麦も初日と最終日に「変わり蕎麦ファン」が大勢いらっしゃいます。提供期間が一番短いのが“かぼちゃ切”。冬至の12月22日から25日までです。
NOMA
たったの3日!メモしておかないと食べ逃してしまいそう(笑)。
ほし
私はこちらの“よもぎ切”(5月11日~23日)が好きなのですが、オーソドックスなものだと“茶そば”、“柚子切”、“しそ切”あたり。面白いところでは"トマトつなぎ”“くちなし切”“柿の葉切”や雛祭りの“三食そば”(柚子、けし、クルミ)なども。堀井さんが店に入られてから熱心に開発されたそうですね。
堀井社長
先代の頃にも “卵切”“しそ切”“ごま切”などの定番がありましたが、新しい季節の蕎麦をつくるべく、いろいろな食材で試作しました。正月に提供する“桜海切”(1月4日~8日)は唐辛子や京人参も試してみて、一番美しく色が出て味も香りも良い桜海老に落ち着きました。ほかにも鯛やエビのすり身、梨、リンゴ、山葵……茹で釜のお湯がにごってしまったり香りが飛んでしまったりして、ボツにしたものもたくさんあります。現在のラインナップに落ち着いたのは30年ぐらい前。新しい"季節の変わりそば"は今も募集中なんですよ。
NOMA
幻のお蕎麦がたくさんあったんですね。今日いただいた“青柚子切”はフレッシュな香りが魅力でしたが、黄色い柚子を使う冬の“柚子切”(12月1日~30日)は豊かな香りと味わいを楽しめそうです。変わり蕎麦、バラエティーに富んでいて楽しいです。
3人
ほし
3つの“季節の変わりそば”はいかがでしたか?
NOMA
私もほしさんと一緒で、“青柚子切”が一番好きでした。色合いも香りも味わいも三者三様で、“さらしな”という白いキャンバスに季節の色が乗っているんだなと感じました。なにより感動したのが、四季の細やかなうつろいを楽しむ遊び心。身体のバイオリズム的にも四季は深く関係していますし、日本人らしい豊かな美意識が投影された食文化が変わり蕎麦なんですね。
ほし
純白で無垢な“さらしな”だからこそ、蕎麦本来の魅力と季節の見立てが共存できる粋な蕎麦と言えますね。

ーーつづく。

店舗情報店舗情報

総本家 更科堀井
  • 【住所】東京都港区元麻布3-11-4
  • 【電話番号】03-3403-3401
  • 【営業時間】11:45~20:30(L.O.)、土日は11:00~
  • 【定休日】水曜、1月1~3日、8月第1週
  • 【アクセス】東京メトロ・都営大江戸線「麻布十番駅」より5分

文:森本亮子 写真:本野克佳 ヘアスタイリング:河原里美

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森本 亮子(編集者・ライター)

1980年兵庫生まれ、東京・錦糸町界隈に生息。出版社の雑誌編集を経てフリー9年目。肉(偏愛部位はハラミとクリ)、酒、下町酒場、イタリア、盆栽が好き。