北尾トロさんの青春18きっぷで里帰り、そして実家メシ。
昼は名古屋できしめんを、夜は津山でホルモンうどんを。

昼は名古屋できしめんを、夜は津山でホルモンうどんを。

名古屋でカメラマンの中川カンゴローと合流して、オヤジツープラトンで門司港を目指します。でも、1日目の目的地は津山。せっかくなので、普段なかなか泊まらない土地で夜を過ごそうと思ったわけ。↑の関ヶ原を通過したときは、まだ旅の半分にも満たない頃。天下分け目の合戦に思いを馳せながら、実家メシを目指す旅の2回目です。

駅弁とお茶と冷凍みかんは何処へ?

名古屋には名物料理がいろいろあるが、乗り継ぎの間に済ませるとなれば昼食はきしめん一択だ。在来線のホームにある立ち食いの店で、素うどんならぬ素きしめん。鰹節が効いて、これが旨い。満腹。あとは途中駅で買い食いでもしながら行こう。

立ち食いきしめん
2食目。わずかな乗り換え時間の相棒は、ホームの立ち食いきしめん。
北尾トロさん
名古屋で食べるきしめんは、また格別な気がするのは、なぜ?
電光掲示板
腹ごしらえを終えたら、大垣へ向かうのだ。松本を出て、早5時間!

が、そうは問屋が卸さない。12時30分名古屋発→13時12分大垣発→13時47分米原発、いずれも乗り換え時間が数分しかないのだ。しかも、ホームには売店がなく、飲み物くらいしか買うことができない。車内もけっこう混んでいる。まさか席取りに必死になるとは思わなかった。
「昔はちょっとした駅につくと駅弁売りがいたけどなぁ」
「弁当とお茶と冷凍みかん買って」
あのみかんが絶妙に旨くて……、いつの時代の話だよ!
米原からは長距離を走るローカル電車に乗ることができたので、姫路まで約2時間半を居眠りしながら過ごすことができた。体力が回復したところで、いったん山陽本線を外れ、本日の宿泊地である津山に向かおう。ここには、まだ食べたことのない名物料理、ホルモンうどんがあるのだ。

車窓
鉄橋を走る大きな音に、ふと我に帰ると、車窓には大きな川が流れていた。涼しげだなぁ。
北尾トロさん
電車の揺れに身をまかせ、うとうと。電車で寝るのは、やっぱり気持ちいい。
田んぼ
田んぼの真ん中に肉料理店の看板を発見。乗客に向けてのものか、はたまた農作業をしている人に?

津山名物ホルモンうどんで英気を養う。

大阪
目的地であることが多い大阪も、この日は数ある通過駅のひとつ。
大鳴門橋
本州と四国を結ぶ大鳴門橋を望みながら、電車は走る。

B-1グランプリで上位入賞したことで全国に知られるようになった津山ホルモンうどんだが、津山とホルモン料理の関わりは古い。津山には奈良時代に市が開かれた記録があり、古来から牛馬の流通地点だったため、肉を食べる文化が根づいているという。その伝統が肉の処理スピードの速さに活かされ、鮮度のいいホルモンを堪能できる。で、飲み食いした後の〆の定番として愛されているのがホルモンうどんということらしい。
姫路で姫新線に乗り換える。姫新線は兵庫県の姫路と岡山県の新見を結ぶJR西日本のローカル線で、津山は沿線の主要駅。僕たちが乗ったのは2両編成タイプで、短い駅間をキビキビと走る。部活からの帰宅時間にあたるのか、学生を中心に車内は混み合い、座ることもできない。

姫路城
ホームから遠くに見えるのは、国宝の姫路城ではないですか!
姫新線
関東で暮らしていると、縁のない姫新線。初めて乗り込む。2両編成だった。
電車内
なんと、平日の昼だというのに、混んでる……。座れない。きついなぁ。
路線図
ふと、見上げればかわいらしい案内を発見。混んでいても殺伐とした気分にならない。いいですな。
川
気持ちいい景色に、うっとり。子どもの頃は、この川を見てもなんとも思わなかっただろうなぁ。
佐用駅
電車を待つ高校生の何気ない仕草に青春を感じるのは、なぜだろう?
ホーム
気がつけば、西日の時間ですよ。電車のラインと女性のスカートのオレンジの妙。

途中で2度乗り換え、津山駅についたのは18時43分だった。
「ホルモンうどん、ホルモンうどん」
呪文のように唱えながら駅を出る。そんなにホルモンが好きかと問われれば、そうでもないと答えるしかないのだが、朝からおにぎり1個ときしめんしか食べていない胃袋が、カロリー補給を強く求めているのだった。問題はどこに行くかだ。名物だけあって、津山はホルモンうどんを提供する店が50店舗以上もある。

津山駅
11時間かけて松本から津山に到着。もしかして人生最初で最後の津山の夜になるかも。
津山駅
津山駅の改札を抜け、外に出ると、いきなりセブンイレブン。あゝ、旅情……。

「今夜はどこに泊まるの?」
吉井川にかかる橋のたもとで夕焼け空を見ていたら、通りかかった地元のオヤジに声をかけられた。日課のウォーキング中らしい。ホルモンうどんをどこで食べようか考えていると言うと、オヤジは「お?」という顔になり、少し眉間にシワを寄せつつ断言した。
「いろんな店があるけど、地元の一番人気でオススメの店ならあるよ」
ほう。その理由は?
「鮮度が抜群で値段も手頃な居酒屋です。ただ、いまから宿に行ってそれからとなると席があるかどうか。急いだほうがいいですよ。じゃ、私はこれで」
言い残すとさっさと歩き始めるウォーキングオヤジであった。悩んでいるところに地元民からの自信アリ気な情報提供。これは行ってみるしかない。

夕焼け
夕焼け空をありがたがるのは、よそ者の証なのかも。だから声をかけられたんじゃないかな。

ホルモンうどん店を教えるためだけに姿を現したと思えるほど、絶妙のタイミングで通り過ぎていったウォーキングオヤジオススメの店へ直行すると、運良く座敷席が空いていた。まずはビールで乾杯し、串焼きを頬張るとコリッとした歯ごたえだ。馴染みのあるメニューで比較すべくもつ煮込みを頼んでみたら、プリプリ感がすごかった。
噂のホルモンうどんも、さすがの旨さだ。肉がいいのはわかっていたが、味噌や醤油をベースにしたタレに独特の甘辛さがあり、ホルモンから出た濃厚な出汁が加わってパンチ力も申し分ない。こんなのをしょっちゅう食べていたら夏バテ知らずになりそうだと思ったが、長時間&長距離移動後の僕とカンゴローは、最後の追い込みでバッタリと箸が止まってしまい、デザートのアイスを買いにコンビニに駆け込んだのだった。

ホルモンうどん
3食目。念願叶って、津山でホルモンうどん!
北尾トロさん
さすがに疲れたなぁ。まだ旅6分目なり。

――明日につづきますよー。

文:北尾トロ 写真:中川カンゴロー

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北尾 トロ(ライター)

1958年、福岡で生まれる。 小学生の頃は父の仕事の都合で九州各地を転々、中学で兵庫、高校2年から東京在住、2012年より長野県松本市在住。5年かかって大学を卒業後、フリーター、編集プロダクションのアルバイトを経て、26歳でフリーライターとなる。30歳を前に北尾トロのペンネームで原稿を書き始め『別冊宝島』『裏モノの本』などに執筆し始める。40代後半からは、日本にも「本の町」をつくりたいと考え始め、2008年5月に仲間とともに長野県伊那市高遠町に「本の家」を開店する。 2010年9月にノンフィクション専門誌『季刊レポ』を創刊。編集発行人を務めた。近著に『夕陽に赤い町中華』(集英社)、『晴れた日は鴨を撃ちに 猟師になりたい!3』(信濃毎日新聞社)がある。