酒場の入口、酒場の出口。
西荻窪の夜は「コノコネコノコ」から始まる。

西荻窪の夜は「コノコネコノコ」から始まる。

西荻窪の酒場は優しい。常連客にも一見客にも、穏やかに接してくれる、そうなのだ。素敵な話。酒飲みたちが、多士済々な酒場を巡りたくなるのも、わかるわかる。今宵は「コノコネコノコ」で、前菜おまかせ3品盛り↑からスタート。“生ハム、おかひじき、夏野菜のミニサラダ”と“枝豆とコーンの白和え”に“やわらかレバーペースト”ですよ。

雲のような白い肉と、黒い砂糖で造った焼酎を。

しばし、ほかの土地に住んだが、どうしても帰りたく、2004年に西荻窪に再び戻ってきた。
西荻の店のいいところは、個人営業の店が多く、30年前と変わらず客を実に大切にしてくれるとこだ。カウンター中心の店でも、常連だけを相手にするわけでなく、優しくさりげなく初めてのひとり客でも声をかけてくれる。

壁飾り
「こわくない」。その言葉を見ると、なんだか安心。初めてのときは、特にね。そう、いい酒場は、優しいんですよね。

そんな店のひとつに「コノコネコノコ」がある。西荻窪駅北口にある野田駿大郎さん、美生さんの夫婦でやっている。まだ2年ほどの営業だが、よく客が入っている。多国籍料理を謳っているが、駿大郎さんが中華料理の店にいたこともあって、辛さを客の希望のままに出す麻婆豆腐や竹せいろで蒸し上げる焼売もいける。

羊肉の麻婆豆腐
羊肉の麻婆豆腐900円。見た目は、おっ辛そうだ、と身構えるかもしれないけれど、好みの辛さを伝えれば、自分好みの香り高いひと皿が味わえますよ。
野田シュンさん、みおさん
店を切り盛りするふたり。「コノコネコノコ」は野田駿大郎さんと美生さんが、2017年10月に西荻の地に開きました。
鶏挽肉のラープ、凍らせライムまるごとジンリッキー
鶏挽肉のラープ(ラオスのハーブサラダ)750円に合わせて、凍らせライムまるごとジンリッキー850円(ライムを残してお酒のおかわりもできる!)を、どうぞ。
冷しワンタン キュウリのガスパチョソース
冷しワンタン キュウリのガスパチョソース750円。暑い夏にはぴったり。多国籍料理を謡う店ならではの料理ですねー。

まず、僕が頼むのは雲白肉(ウンパイロウ)だ。
駿大郎さんが「絵みたいですよね、雲のような白い肉って」って言う。なるほど、豚ロースのブロックを蒸したもののスライスが並ぶ。まだ蒸したてだ。辛味をつけた醤油につけて食べると、口ににじむ脂の甘さが多幸感を呼び寄せる。で、奄美の黒糖焼酎「浜千鳥の詩」のロックで流す。添えられたキュウリを食べたら、涼味もやってくる。脂の甘さと、黒糖焼酎で調子がグッと上がる。西荻の一杯目はこうして始めるのが一番だ。

雲白肉
雲白肉(蒸し豚)1,000円。ちなみに「コノコネコノコ」はボトルキープOK。そのときは、ボトルに猫の絵を描いてもらいます。

ところで、「コノコネコノコ」にはミュージシャンで画家の原マスミさんの絵が数点飾られている。僕は吉本ばななさんと原マスミさんと頻繁に海外に取材旅行に出かけたので、原さんのチャーミングな絵に囲まれるのも嬉しい。美生さんが原マスミさんの熱狂的なファンなので、原さんのライブがある日は「コノコネコノコ」も店を休む。それだけは曲げない。
好きなことのある人がやっている料理屋は、それだけで信用できるのだ。

――つづく。

原マスミさんの絵が飾られた店内
原マスミさんの絵が飾られた店内は、見ているだけでいい気分。装飾品は、猫、猫、猫。あちらこちらにいますよ。
外観
カウンター7席とテーブル2名席がひとつと、4名席がふたつ。ゆったりとした空気が流れる店内は、駿太郎さん、美生さんの人柄がそのまま店柄なんだな。

店舗情報店舗情報

コノコネコノコ
  • 【住所】東京都杉並区西荻北3‐32‐10
  • 【電話番号】03‐6319‐2780
  • 【営業時間】18:00~翌2:00頃
  • 【定休日】不定休(HPやSNSに記載)
  • 【アクセス】JR「西荻窪駅」より5分

文:石原正康 写真:石渡朋

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石原 正康(編集者)

1962年、新潟市生まれ。法政大学を卒業後、角川書店入社。1993年、幻冬舎設立に参加。編集者として、五木寛之、村上龍、天童荒太、白川道、吉本ばなな、山田詠美などの作家を担当し、数多くの話題作やヒット作を手がける。現在、幻冬舎の専務取締役として編集本部長を務める。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演するなど、業界屈指のベストセラーメーカーとして知られる。