さすがに毎日は無理だけど、週1回ならがんばれるかな(仮)
モテる努力をしてもモテない節。

モテる努力をしてもモテない節。

なんの話だよ。タイトルを目にした瞬間、そう思いますよね。恋愛の真理は、いまも昔も変わらない。モテる奴は何をしてもモテる。モテない奴は努力をしてもなかなか報われなかったりする。けれども、恋愛に限らず奇跡が起こることはある。そんなお話かな。

野球が好き。ずっと。きっと、これからも。
中学のときは野球部。でもね、高校では野球部に入らなかった。
理由は単純。坊主になるのが嫌だったから。髪を伸ばして、女の子にモテたかった。ただ、それだけ。なんだか邪に思えるけれど、高校生としては至極健全。

僕が通っていた高校の野球部は決して強いとは言えなかった。甲子園は遠い存在。けどね、朝早くから暗くなるまで必死に練習をしていた。僕がちゃらちゃらしていたときも、文字通り白球を追っていて、放課後、グラウンドの横を通り過ぎると、泥だらけの部員の姿がどうしても目に飛び込んでくる。あぁ。野球を続けなかったことをちょっぴり後悔する瞬間。青春、いいなぁ。野球部のみんながなんだかうらやましい。

高校を卒業して故郷の新潟を離れた後も、僕は野球部OBでもないのに、春も夏も秋も、地方予選が始まるとそわそわ。でもね、戦績は芳しくない。野球の裾野は広いからね。県立高校が躍進するのは、簡単なことじゃない。

10数年前、母校は僕の実家のすぐ近くにお引っ越し。相変わらず野球部は朝も放課後も熱心に練習に励んでいて、その声が実家まで聞こえてくる。そうすると、やっぱり、気になる。父は散歩がてら、野球部の練習をちょくちょく観に行くようになった。とはいえ、なかなか勝ち進めない。あんなに練習しても勝てないもんだ。予選で負けるたび、父はこぼしていた。

それがね、今春、吉報が届いた。県大会の決勝に進出。なんと、49年振り。うわぁ。興奮、興奮。牛肉でも差し入れないといけないんじゃないか。冗談とも本気ともつかない言葉で、父は喜びを表現していた。

2019年6月1日。38年振りに進んだ北信越大会の1回戦。残念ながら、三条高校は負けちゃった。けどね、夏の楽しみが増えたことは確か。

野球を辞めて30数年。もしも、高校入学前の自分に逢ったら、これだけは言いたいな。野球部に入って、頑張ってみたら。髪を伸ばしたからってモテるわけじゃないからね。

dancyu web編集長 江部拓弥
写真:船寄剛