さすがに毎日は無理だけど、週1回ならがんばれるかな(仮)
夜のランチ。

夜のランチ。

dancyuのwebが始まって、6ヶ月。人間で言えば、寝返りが出来るようになる頃なのかな。まだまだでもあり、いよいよでもあり、これからでもあります。いままで通り、みなさまにかわいがっていただけたら嬉しく思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

春。近所に無国籍料理店が看板を上げた。
そこは、ほんの少し前まで、古い洋食屋さんがあった場所。
かつての落ち着いた佇まいは、原色が眩しい派手な姿へと変貌を遂げた。

新しく生まれ変わって、3日目の夜。あんまり気が進まなかったけれど、夕食を食べ損ねて夜の9時、とにかく腹ペコで、駅から家への帰り道に煌々と灯る光に吸い寄せられるように、僕はその店の扉を開けた。

中に入って、びっくり。居抜きという言葉は、この店のためにあるのかもね。そう思わせるほどに、何も変わってない。在りし日の洋食屋さんのことが想い出されて、ちょっぴり切なくなる。これなら、外観もそのままでよかったのにな。

僕のほかに、客はいなかった。メニューを運んできた店員さんは、異国の女性。おそらく東南アジアのいずれかの国の生まれだと想像する。たどたどしい日本語で話しかけてきた。
「オススメ、タベマスカ?」
おっ、お薦めは何かな?
「ランチ」
えっ、何だって?
「ランチ、オススメ」
そう言って、彼女はメニューのランチページを僕の前に広げてくれた。そこには「LUNCH MENU 11:30~14:30」と書いてある。ただいま、夜の9時19分。大丈夫?
彼女はニコニコしながら、頷いている。
「チキン、ヨルワ、タカイヨ」
特段、チキンが食べたいわけじゃないし、そもそも、いまがその夜なんだよね。なんて野暮なことは言うまい。僕は彼女の言うがままに、ランチを注文することに決めた。
「ランチ、ヒトチュ」
店内に彼女の声が響いて、ちょっとだけ虚しくなる。

夜もそれなりに更けているのに、ボリュームたっぷりのランチを食べて、僕は店を後にした。彼女が店先まで送ってくれた。
「ヒルモ、ヤッテルヨ。キタホウガイイ」
そう言って笑顔で手を振る彼女を見ていたら、いつの間にか僕も笑顔になっていましたね。

dancyu web編集長 江部拓弥
写真:米谷亨

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