アルザス・ワイン街道をゆく。
ワインと温泉。
ぶどう畑 ぶどう畑

ワインと温泉。

2018年の秋。アルザス・ワイン街道を探訪した。フランスのアルザス地方とロレーヌ地方にまたがる標高1,000mを超えるヴォージュ山脈が西側からの雨雲を遮り、アルザス・ワイン街道に乾燥した空気をもたらす。雨が少なく、日射量が多い気候が、香り高くみずみずしいぶどうを育んでいる。

ワイン街道は170km続く

ワイングラス

ストラスブールの中心から車で20分も南下すれば、南北に走る海抜1,000m前後のなだらかなヴォージュ山脈の連なりが右手遠方に見えてくる。山並みに沿った麓に延々170kmも続くのが、アルザス・ワイン街道だ。東側にはドイツとの国境であるライン川が平行して流れる。ヴォージュ山脈とライン川に挟まれ独自の歴史を歩んだこの地は、アルザスワインという宝を育んだ。

ぶどう街道

ヴォージュ山脈の麓になだらかな傾斜で南北に広がるぶどう畑は、房が摘み取られ真っ黄色の葉っぱが秋の陽光に輝いている。一様に黄色く色づくのは、白ワイン用のぶどうの木の特徴だという。
秋の陽射しは柔らかく、西からの湿った空気がヴォージュの山並みで遮られ快適な陽気だ。標高200m~400mにかけて広がるぶどう畑は、朝晩は冷涼で、日中は太陽に照らされ、乾燥したテロワールに恵まれている。現在119のコミューン、4,200の生産者がワイン造りに従事する。

ぶどう種/手

ワインは最高級のグランクリュから1,000円~3,000円のお手頃テーブルワイン、発泡系のクレマンに、赤やロゼもわずかに生産するが、90%以上が辛口の白ワインだ。
種類は、代表的なリースリングやミュスカ、ピノグリ、ピノブラン、シルバネール、ゲベルツトラミネール。醸し出される硬質な透明感や繊細な香りこそがアルザスのテロワールが生み出したものだろう。

ローマ時代から続く温泉保養地

アルザスの探訪は、ワインともうひとつ、思いがけない楽しみがあった。古代ローマ時代に開発され、世界的に有名なドイツの温泉保養地バーデンバーデンだ。ストラスブール鉄道駅からローカル線に乗って、1時間足らずでライン川を渡りバーデンバーデン駅に到着する。欧州の国境はもはや日本の県境と同じで、どこで国境を越えたのか判然としない。駅から徒歩でも行ける距離のところにフリードリッヒ浴場とカラカラ浴場があり、日本の温泉街と同様、周辺には飲食店が立ち並ぶ。昼時とあって、遠足で来たのか大勢の子供達が店のテラスでハンバーガーやポテトを頬張っている。賑やかでほほえましい光景だ。

温泉

温泉に入ると、40度程度の日本と違って、30度前後のぬるい湯だ。浴槽は大小取り混ぜていくつもあり、古代ローマ時代を彷彿させるムードが感じられる。
湯につかった後はサウナ。このパターンを繰り返しながら、次々と湯巡りをする。マッサージを受けるのも自由だ。最大3時間のコースを終えた後は身体はじんわり暖まっている。ひと風呂浴びた後は、万国共通だ。ワイン紀行ではあるが、ここはやはり「ドイツビールで乾杯」。飲食店のテラス席での極上の一杯が、喉を潤した。

――つづく。

文:香西聡平 イラスト:ミヤザキオサム

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香西 聡平

大学卒業後、共同通信社に入社し、編集者として従事する。定年退職後にワインの微妙かつ奥の深さに魅かれ、アルザス、ボルドー、ブルゴーニュ、ナパバレーなどを巡る旅に出る。ワインは醸造される土地で栽培されたぶどう限定で造られるため、地域特有の土壌や気候などの諸条件(テロワール)が香りや味わいに凝縮している。各地のシャトーを訪ね歩き、テロワールを体感したいと願っている。