あなぐまを食べる会
ジビエ料理はじめました。

ジビエ料理はじめました。

福井県福井市「一乗谷レストラント」で行われた、東京・門前仲町「パッソ・ア・パッソ」有馬邦明シェフのジビエセミナーから1ヶ月後。参加者の一人が、ジビエ料理を始めたという。「野生の肉にさわったことすらない」という料理人が人生で初めて取り組んだジビエとは?

「ピッコロ ターヴォロ」のジビエは、真鴨で幕を開けた!

有馬シェフのジビエセミナーから約1ヶ月。参加した料理人、福井市「ピッコロ ターヴォロ」の籔内滉平さんがジビエの提供を始めたという。さっそく店へと向かった。

店内
テラス席のある街中のカフェ・レストラン。春には歩道にも席を出し、いっそう開放的になる。
籔内滉平さん
オープンキッチンで腕をふるう籔内滉平さん。27歳。イタリアンをベースとした料理を提供する。

「熊の脂をデザートにしてしまうなんて、既成概念が崩されました。猪のモツも鹿のパテもおいしくて!なんの臭みもないのに驚きました。実はジビエには前から興味はあって、本はいろいろ買って読んではいたんです。その中の一冊が偶然にも有馬シェフのものでした」

ジビエの本
手元に置いているジビエの本の一冊。依田誠志シェフの『ジビエ教本 野生鳥獣の狩猟から精肉加工までの解説と調理技法 』(誠文堂新光社)。扱ってみたい食材はまだまだある。

「頭で難しく考えるよりまずはやってみよう、という意欲がわきました。自分自身もお客様も取っ付きやすい鴨から始めてみようと、肉屋に問い合わせてみました。新潟産の真鴨の扱いがあることがわかり、取り寄せて試作をしたんです」

籔内滉平さん
「いまは部位ごとに仕入れていますが、いずれは丸々1羽を捌いてみたいですね」と意欲をみなぎらせる。

試作は上々。
「食欲をそそるように、断面が美しくなるように火入れには気を配ります。フルボディのワインにも合う味わいに仕上げたくって、赤ワインと玉ねぎ、ハチミツ、バルサミコ酢のソースにしました。塊肉をここに漬け込むことで、味わいに一層深みを与えます」

真鴨のロースト
秋冬のジビエシーズンに提供する真鴨のロースト1512円。りんごとセロリのサラダを添えて。

初めての提供は宴会料理のコースに入れることにした。客は「食べやすい」「おいしかった」と好反応。その後もジビエのシーズン中は10件ほど注文が続いたという。「地元のお客様は受け入れてくれるだろうか」と不安を抱えながら一歩踏み出した籔内さんにとって、それは自信となった。だが、こうも言う。
「野鳥はまだそれほど抵抗ないと思うのですが、鹿や猪など個体が大きくなると、抵抗感を持つお客様もいます。それをどう崩してメニューに入れていくか。僕自身も、おいしく料理できるよう勉強しなくてはいけません」

いま、店の一番人気はふわふわのメレンゲを乗せたカルボナーラである。続いてはワッフル。今年の秋冬のジビエシーズンには、このカルボナーラやワッフルと並ぶほどに真鴨を使った料理が出るかもしれない。そのためには料理法の研究のみならず、食べ手にも新しい食材になじんでもらう必要がある。まだ幕は開いたばかりのジビエ元年。広まっていく種はまだまかれたばかりだ。

ふわふわカルボナーラ
看板メニューのふわふわカルボナーラ972円。その名のとおり、卵白を泡立てたメレンゲをON!大胆にメレンゲを崩しながら全体を混ぜるとふんわり軽い口当たりに。
プレミアムワッフルのチョコイチゴ
プレミアムワッフルのチョコイチゴ972円。ふわっ、サクッとした食感は焼き立てだからこそ。香ばしいクルミやナッツもいいアクセント。

店舗情報店舗情報

ピッコロ ターヴォロ
  • 【住所】福井県福井市中央1-5-3 ユーキャンビル1階
  • 【電話番号】0776-21-3824
  • 【営業時間】11:00~20:30(L.O.)、金曜・土曜は~22:30(L.O.)
  • 【定休日】火曜(祝日の場合は翌日)
  • 【アクセス】JR・えちぜん鉄道「福井駅」より5分

文:沼由美子 撮影:出地瑠以

沼 由美子

沼 由美子 (ライター・編集者)

横浜生まれ。バー巡りがライフワーク。とくに日本のバー文化の黎明期を支えてきた“おじいさんバーテンダー”にシビれる。醸造酒、蒸留酒も共に愛しており、フルーツブランデーに関しては東欧、フランス・アルザスの蒸留所を訪ねるほど惹かれている。最近は、まわれどまわれどその魅力が尽きることのない懐深き街、浅草を探訪する日々。