イスラム横丁は「イスラム」と名付けられているけれど、アジアの魅力が凝縮したストリート。ネパール人が経営する食材店や居酒屋も軒を連ねます。ムスリム経営のレストランはアルコールNGですが、ヒンズー教徒のお店なら本格料理はもちろんお酒も楽しめますよ!
取材チームが向かったのは、イスラム横丁入り口付近の「ネパール居酒屋モモ」。“居酒屋”と言い切っているのだから、きっとお酒があるのだろう。ここなら誰にも叱られずにビールが飲めそうだ。雑居ビルの2階にある「モモ」は11時から23時までの通し営業。今回のように遅い昼食を済ませたあとの中途半端な時間にも入店できる、きわめて便利なお店だ。年中無休なのも嬉しい。
店内にはネパール人とおぼしき男性グループや、エスニックテイストの洋服がお似合いの日本人女性などで案外にぎわっていた。ビールグラス片手に談笑する客を凝視する私に対し、「ネパールはヒンズー教の国なんで、ビールはOKなんですよ」と編集担当の星野さん。そういえば、そうだったわ……。
メニュー表には、心惹かれる料理が写真付きで並んでいる。ビリヤニやBBQチキンをたらふく食べたばかりなのに、再び食欲が湧いてくる。せっかく来たんだから、我慢は禁物とばかりに4品注文した。
店名にもなっている“モモ”は、ネパール餃子とも呼ばれる定番料理。小籠包のような形をしていて、中身はおもに鶏肉のミンチと玉ねぎ。さっぱりとしていて重たくないので、パクパクと軽快に食べられる。たれは濃厚なので、ちょっぴりつけるだけで十分おいしい。
続いて“フライドやぎ肉”。コリアンダー、クミン、ターメリックなどを使ったスパイシーな一品で、ごろっとしたニンニクもインパクトがある。フライドと書かれていたが、実際にはボイルした肉を油で炒めているそうだ。
「うまい!」「おいしい~」と口々に感激していたら、オーナー婦人のデビさんが声をかけてくださった。「山羊肉はコラーゲンがたっぷり含まれていて、とても身体にいいの。あなた、お肌がプルプルになるわよ」。ホントですか、明日の肌の調子が楽しみです!
3品目は“羊の脳みそ炒め”。白子のような見た目通りクリーミーな口当たりで、クミンをしっかり利かせたメリハリのあるお味。私個人としては4品中、脳みそがもっともビールにマッチしていた。脳みそとビール。文字にすると、とてもシュールだけど……。
ラスト1品は“ティムルチキン”。デビさんによれば、“ティムル”とはネパールの山椒のこと。粒のまま、料理にジャンジャン加えるそうだ。チキンにくっついている“ティムル”をガリッと噛むと、しびれるような刺激が口中を駆け巡る。うーん、気持ちいい!
「1階のお店で“ティムル”を売っているから、連れてってあげるわよ」
食事を済ませた私たちを、デビさんが案内してくれるという。
――つづく。
文:佐々木香織 写真:阪本勇 イラスト:UJT(マン画トロニクス)