
「スペーシア Xに乗車。旅行への高揚感とともに、車窓から杉並木などの景色を楽しみながら味わう」。そんなコンセプトをもとに東武鉄道とコエドビール、dancyuが共同開発を進めてきたビールが、ついに完成しました!今回特別に、dancyu祭の会場にそのビールがやってきます。
スペーシア Xは、浅草・とうきょうスカイツリー駅と東武日光・鬼怒川温泉駅をつなぐ東武鉄道の新型特急列車。その上質な移動時間と空間が評判を呼んでいるが、車内にあるカフェカウンター「GOEN CAFÉ SPACIA X」で提供される美味も注目を集めている。
そんなスペーシア Xとdancyu、そして日本のクラフトビール醸造所の先駆けとして知られるコエドブルワリーがコラボレーションビールを造ることとなり、3社の代表が人気特急列車、スペーシア Xに乗車して会議をしたのが今年の1月。
「ビールの味にも旅先の土地を感じたい」というdancyu食いしん坊倶楽部のアンケートをもとに、列車旅で飲みたい理想のビールについて話し合ったところ、江戸文化、日光杉並木街道、車窓からの景色というキーワードが登場。というのも、スペーシア Xの終着点である日光と、コエドブルワリーの本拠地である川越の共通点といえば、江戸幕府初代将軍である徳川家康から始まる江戸文化。そしてその象徴は、江戸時代から日光と東京をつなぐ日光杉並木街道。スペーシア Xの車窓に映る杉並木は、旅の目的地、日光が近づいていることを感じさせるのだ。
「杉、つまりシダーの香りがするホップもあるんですよ。それを使ったペールエールがいいかもしれませんね。ペールエールは、鉄道発祥の地である英国の伝統的なビールなので、東武鉄道にぴったりじゃないですか?」と、コエドブルワリーの朝霧社長が提案。結果、「旅先の土地を感じられる」「つまみと一緒に楽しめる」「ちびちびと飲みたくなる」ビールを目指して、”車窓からの景色にリンクするように杉の香りがする、アルコール度数が低めで飲みやすいビール“を造ることとなった。
第2回の記事では、コラボビールが醸造される様子をレポート。「主役にならないビール、旅の名脇役となるビールを目指します」と話す醸造家の伊藤光弥さんと染谷知良さんが、こまめに数値を測りながら丁寧に醸造していく様を追った。メインで使うホップは、樹脂や柑橘の香りがする「シムコ」と、アーシーな香りがする「ハラタウ・ミッテルフリュー」の2種類。さらに苦味をつけるために、「パト」というホップもプラスされた。発芽したモルト(麦芽)を砕き、温水と混ぜ合わせて糖化させるマッシングという作業から始まり、次に75℃ほどの湯を注いでからろ過する作業を3回繰り返すことで、モルトの糖分を余すことなく抽出。ろ過して麦芽粕を取り除いた麦汁を煮沸してモルトのオフフレイバーを取り除き、殺菌してからワールプールという工程でホップを加えてビール特有の風味をつける。ここで今回は日光の「田村材木店」にオーダーした日光産の杉のフレッシュなチップも投入。酵母にはペールエールやIPAなどの香り高いビールを造るエール酵母(上面発酵酵母)を使った。
「旅の始まりとして朝の乗車時間にも楽しめるよう、アルコール度数は4~4.5%と控えめにしています。その分、味が薄くなりがちなので、フルーティーな酵母を使うことで複雑な奥行きのある味わいを出したいと思います」と伊藤さん。発酵タンクに移したあとは発酵・熟成させながら、再び杉チップを浸して抽出する段階へ。「ここからは未知の世界。杉チップを引き上げるタイミングを見計らって仕上げます」。ビールの仕上がりは次回へのお楽しみとなった。
3月、ビールが完成したという報告を受け、再び3社の代表がコエドブルワリーの本拠地である川越に集合した。早速みんなで試飲したところ、「香りがいい!」「柑橘のような風味で飲みやすく、最後の苦みがさわやか」「軽やかながらも飲みごたえがある」「温度が上がってもおいしいから、ちびちび飲めて列車旅に最適」「雑味がなく、きれいな味わい」などと、味の評価も上々。
各社が持ち寄ったアイデアをもとに、相応しい名前を相談した。
朝霧社長の「スペーシア Xの“X”って、格好いいんですよ。だから、それにかけてXPAっていうのはどうでしょうか。非公式ではありますが、XPAというビールスタイルがあるんです。エクストラペールエールの略で、IPAとペールエールの間くらいの感じ。今回のビールもおおむね該当します」の言葉に一同が賛同。とはいえ、やっぱりシダーも捨てがたいということで、最終的に決定したのは「Cedar X PA(シダー エックス ピーエー)」。
3月よりスペーシア Xでの車内販売が開始されたこのビールが、なんと早速dancyu祭で楽しめる。
新商品のおつまみとの相性を、さあ、ぜひお試しあれ!
文:藤井志織 撮影:赤澤昂宥