車内のカフェでおいしいフード&ドリンクを提供することでも話題になっている特急列車、「スペーシア X」とdancyuがコラボ。さらに、日本のクラフトビール醸造所の先駆けとして知られるコエドブルワリーが醸造を手がけ、コラボレーションビールをつくります!そのコラボビールが完成するまでの軌跡をweb記事で公開していきます。第一弾では、どんな味わいのビールをつくるか、3社の代表が集まって作戦会議を行った様子をお届け!
「スペーシア X」は、浅草・とうきょうスカイツリー駅と東武日光・鬼怒川温泉駅をつなぐ東武鉄道の新型特急列車。その上質な移動時間と空間が評判を呼んでいますが、車内にあるカフェカウンター「GOEN CAFÉ SPACIA X」で提供される美味も注目を集めています。昨年のdancyu祭2024では、そんな「GOEN CAFÉ SPACIA X」で人気のクラフトビール、クラフトコーヒー、スイーツ等を提供。そして今年は、なんとdancyu、およびコエドブルワリーとのコラボレーションビールをつくることに!
そこで東武鉄道の小金井部長、醸造を手がけるコエドブルワリーの朝霧社長、dancyu副編集長の杉下が、実際に乗車しながら作戦会議を行いました。まずは杉下がdancyu読者組織、食いしん坊倶楽部に「東武特急スペーシア Xで“飲んでみたいビール”」をテーマに行ったアンケート結果を説明。
「いちばん多かったのは、旅先の土地を感じたいという意見ですね。そのうえで、とにかくウマいビールが飲みたいと(笑)。とはいえ、旅行の始まりにはアルコール度数が高くないほうがいいという意見も多いようです。やっぱり到着したらおいしいものを食べたいから、車内ではほろ酔いくらいがちょうどいいんでしょうね」。
「旅の高揚感をかきたてつつ、気軽に飲みやすいものをということですね。となるとアルコール度数は4%くらいでしょうか。アルコール度数はある程度コントロールできるので、味わいを優先して決めていきましょう。車内で2〜3杯飲めたら楽しいですよね」と朝霧社長。
そこで、スペーシア Xで人気のおつまみとの相性もチェックすべく、「あさのポークのジャーキー」「日光湯波おかき」「頂鱒とらっきょうのリエット」などを試食することに。「一気にぐいっと飲むというよりは、つまみを食べながらちびちび飲む感じがdancyuらしいですよね」と杉下。「肉、おかきは、ビール界のつまみの王道ですね」と言いながら、「頂鱒とらっきょうのリエット」を食べた朝霧社長の目がキラリ。
「このリエットのスモーキーな雰囲気には白ビールが合いますよ!ビールと魚ってあまり合わせないかもしれませんが、鱒や鮭のように甘味がある魚と、白ビールの小麦のアミノ酸やクローブ様の香りは相性がいいんです」とのこと。
ならば、いちごや湯波、羊羹の場合は?と、しばし日光の名物についての意見が飛び交います。
「羊羹のような甘味に合うビールもできますか?」という杉下の質問にも「食材の色合いと一緒だと基本的には相性がいいので、ポーターやスタウト、シュバルツといった黒い色のビールがおすすめです。黒ビールの色は麦芽をローストした色なので、チョコレートやフルーツの甘味とも合うんです。うちの『漆黒』や『紅赤』で試してみてください」と答えてくれる朝霧社長。さすがビール伝道士。
「ご当地らしさが必ずしもビールとしておいしいというわけではないかも。例えば湯波なら、原料である大豆をそのままビールにするよりも、湯波と合うピルスナー系のビールをペアリングするというアプローチも魅力的だと思います」
この他にも、「日光の名産である山椒を使ったビール」や「有名な日光の紅葉を思わせるレッドエール」など、アイディアは尽きない様子。
埼玉県川越から地域農業を基軸にビールの豊かな味わいを世界に発信しているコエドブルワリーは、地域の個性を大切にしています。今回の企画会議にあたっても、朝霧社長は日光に前泊をして、日光について想いを巡らせたうえで臨まれたとのこと。
「日光を代表する社寺である日光東照宮には、江戸幕府初代将軍である徳川家康が祀られています。私たちの本拠地である川越も、徳川将軍家や江戸と関わりが深いために“小江戸”と呼ばれている。つまり、江戸文化という共通項があるわけです」
江戸文化というキーワードが出たところで、俄然、会議が盛り上がります。
「江戸文化って本質を得ていますよね。家康は天下をとったにもかかわらず、晩年まで質素を好んでいたらしいんです。きらびやかさよりも本質を大切にしていた。そこはdancyuの考え方とも共通するところ」と杉下が言えば、「いろんな視点があるなかで、江戸っぽさに着目するのは面白いですね。日光と東京をつなぐ江戸時代からの象徴といえば日光杉並木街道。車窓からの景色にもリンクして、杉を感じるビールも素敵かもしれません」と小金井部長。
そこで「杉、つまりシダーの香りがするホップもあるんですよ。それを使ったペールエールがいいかもしれませんね。『あさのポークのジャーキー』に使われている山椒とも合いますし。ペールエールは、鉄道発祥の地である英国の伝統的なビールなんです。東武鉄道にぴったりじゃないですか?」と朝霧社長が提案。
白熱の会議を経て、「旅先の土地を感じられる」「つまみと一緒に」「ちびちびと飲みたくなる」といった、スペーシア Xで飲みたい理想のビールの要素が固まりました。どんなビールが完成するのかは、第二弾のレポートにてお届け予定。どうぞお楽しみに!
文:藤井志織 撮影:赤澤昂宥