コース全盛の鮨業界において、お好み大歓迎の町寿司を展開する「宗達グループ」が祭に初参戦!酒のつまみにも、お土産にも最適な太巻きを提供します。
一人二万、三万は想定内。中には片手を越す高額店も少なくない昨今の鮨業界だが、そんな鮨バブルなどどこ吹く風とばかりに、2016年、初台にオープンしたのが、ここ「すし宗達」だ。
オープン以来、変わらぬ町寿司のスタンスを貫き続け、現在では、渋谷「光琳」、人形町「其一」、初台「乾山」に加え、おでんと寿司の「寿司 おでん 芦舟」の計5軒に。仕掛け人は、ご主人の新田真治さん。子供の頃、町寿司で食べた握りの美味しさ、ワクワク感を多くの人に伝えたいとの想いから始めたそうで、どの店も昔ながらに好きな鮨だねを好きなように食べられるお好みのスタイルが評判を呼んでいる。
しかも、明朗会計!壁にかかった黒板には、その日のネタがずらりと並ぶ。その数常時およそ30種余り。一番安いイカゲソや卵焼きから、最高値でも車海老や雲丹の980円の良心価格!物価上昇の折、たまに1,000円を越すこともままあるそうだが、それにしても、である。380円、480円台が中心を占める中、そのクオリティを鑑みれば、新田さんの企業努力がわかろうというものだ。
曰く「全店でまとめて仕入れ、無駄なく使い切ることで価格を抑えている。」そうだが、安さの理由はそれだけではない。
毎朝欠かさず豊洲に通い、仲買いの人との信頼関係を築きあげ、更には自分ファーストで買い付けるのではなく、捌ききれずに残っている魚介が有れば、それらを一手に引き受けるなど、相手の立場を考慮した仕入れの姿勢が仲買いの好感を得たがゆえの成果だろう。
それゆえ、“この値段にしては”では決してなく、“この値段なのに”と目を見張らされるのだ。例えば、江戸前鮨の華である本マグロ。ある意味鮨店の格を決める鮨だねと言っても過言ではないが、同店の仕入れ先はあの高級鮨店御用達の「やま幸」。その大トロがなんと一貫580円!赤身に至っては380円、中トロでも480円と全て三桁という脅威のお値段なのだ。
一方で、鮨職人の個性が現れる小肌やサバなどの締め物も、新田さんの得意とするところ。昔ながらに塩と酢できっちりと締めつつも、僅かに生な食感と青魚本来の風味を残した加減が絶妙だ。横井醸造のコクのある赤酢“與平衛”に加え旨味とキレのある“金将“をブレンドした鮨飯との相性も上々。口中で鮨飯がはらりと解けるよう少し空気を含ませて握る一貫を頬張れば、程よい厚さの鮨だねと渾然一体。鮨の旨さは、鮨飯と鮨だねのバランスにあると得心するはずだ。
また握りのほかにも、つまみで一杯やりたい飲兵衛たちに嬉しい酒肴も充実。“イカゲソ焼き”480円や“カマ焼き”800円といった鮨屋らしい一品はもとより、割烹はだしの“甘鯛の松笠焼き”や、予約をすれば“すっぽんコース”もOK(それも12,000円!)という芸幅の広さには脱帽するばかりだ。
この町寿司界のヒーローが、今回祭に初参戦。30日31日の両日にわたり、店でお土産用に出している太巻きを用意。と言っても並の太巻きではない。具が奮っている。太巻きの定番アイテムである卵焼きや煮穴子、かんぴょうだけではなく、前出の本鮪や小肌も巻き込んだ海鮮太巻きとなっている。
新田さんによれば「マグロは、イマドキのさっと醤油を潜らせただけの漬けではなく、柵ごと湯霜にかけ3時間ほど漬けています。」とのこと。旨味がキュッと凝縮されたマグロの漬けに、大ぶりの穴子を使えばこそのふっくらとした煮穴子、そこに小肌の粋な酸味が全体を引き締めている。分厚いカットも町寿司らしく、口いっぱいに頬張る醍醐味も太巻きならでは。具沢山ゆえ、豊富に揃う酒の肴にもなりそうだ。
※当日は内容や盛り付けが変更になる場合もあります。
文:森脇慶子 撮影:木村心保