
程よく甘い味付けで、おかず感覚でだべられます。少し栗がつぶれたり、芋の粒々が残るくらいの仕上がりも美味です。荻野恭子さんの目からウロコのおせち論と毎年挑戦したくなる、気楽なおせちづくりを紹介します。
市販の栗の甘露煮にはくちなしが使われているので、そのシロップを活用して調味すれば、十分にきれいな色がつきます。
さつまいもを水にしっかりさらすのも、色よく仕上げるポイントです。


直火でなければ、ポリ袋で加熱調理もできます。高温になりすぎないように、蒸気で蒸せばいいのです。
家にある一番大きな蓋付き鍋に、穴の開いたプレートを敷けば蒸し器になって、一つの鍋で複数のおせちが同時につくれます。
鍋の湯が沸騰して蒸気が上がったら弱火にし、その後はずっと弱火で。蒸し時間の長いものから鍋に入れ(鍋肌に当たらないように注意)、時折、湯を足しながら、時間がきたら取り出す。
煮汁が煮詰まる心配がないので、少量の煮物も上手につくれますよ。

| さつまいも | 1本(正味250g) |
|---|---|
| 栗の甘露煮 | 1瓶(300g)(市販) |
| 味醂 | 小さじ1/2 |
| 塩 | 少々 |
さつまいもは厚さ7mmの輪切りにして、皮の内側の筋に沿って厚くむく。水に5分以上さらしてしっかりでんぷんを落とし、水気をきる。

ポリ袋にさつまいもを入れる。栗の甘露煮のシロップを先に半量取り分けておき、甘露煮と残りのシロップ、味醂、塩を入れる。

ポリ袋の上からよくもんで全体をなじませ、空気を抜いて袋の口を閉じる。ポリ袋を二重にして口を閉じ、蒸し器に入れて、弱火で30分蒸す。

さつまいもが柔らかくなったら、熱いうちに、ポリ袋の上から芋だけを麺棒でつぶし、取っておいたシロップを加え、全体をもんでよく混ぜる。


厚くむいたさつまいもの皮は、素揚げにすればおいしいチップスになります。油が冷たいうちに皮を入れ、弱めの中火でじっくり揚げて、熱いうちに塩をふります。


和食、フランス料理、中国料理をはじめ、世界65カ国の家庭料理の知恵を備えた料理研究家。アジア諸国で目にしたポリ袋の活用方法に着想を得て、早くからポリ袋調理を提唱。著書に『ポリ袋漬けのすすめ』(文化出版局)ほか多数。
この記事はdancyu2021年1月号に掲載したものです。

文:岡村理恵 写真:工藤睦子