
連載のトップバッターは、ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ5店舗の飲食店を運営するほか、食の業界で縦横無尽に活躍する、佐藤幸二さん。5品目は、“男のロマン”を詰め込んだ缶詰肉料理です!
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「ゆでスパタン」。
一体、何のことだろう?と首を傾げた読者のために、フルネームをお伝えすると、「ゆで牛タンをスパムでそっくりにつくってみた料理」となる。
佐藤さん、なぜ、そんなことを思いついたんですか?
「ぼく、ゆで牛タンが大好きなんですよ。家でも食べたいけど、牛タンって安くないし、そもそもスーパーで手軽に買えないでしょ。それなら、『限りなく牛タンに近い何か』を探せばいいんだと思って。色々試した結果、スパム(ランチョンミート)が一番似ていたんですよ」
牛タンへの愛と執念によって、ランチョンミートとの出会いが叶ったというわけだ。
「つくり方もだいたいゆで牛タンと同じっす」と佐藤さん。
ランチョンミートを弱火で長時間煮ることで、ゆで牛タンのようなしっとりやわらかな食感に仕上がるという。
レシピには3時間煮ると書いてあるけれど、そんなに煮ないとダメですか。
「いいえ、1時間で十分ですよ。3時間というのは、男のロマンです(笑)。長時間煮ている俺って格好いい!って思うじゃないですか」
ガハハと笑いながら、3時間煮たランチョンミートの厚みを半分にカットすると、断面は牛タンと見紛うような淡いピンク色をしていた。
想像以上に似ていることに驚いていると、佐藤さんはさらに包丁を入れていく。
「牛の舌の形と同じように舌先に向かって幅をせまくカットします」
両側面を切り落として形を整えたら、続いて舌の先を二股にカットする。あれ、牛の舌先って割れてたっけ?
「割れていません。でも、カットしたほうが、ベロっぽく見えるじゃないですか(笑)」
……これも男のロマンなのだろうか。
「薄目を開けて食べれば、牛タンと変わりません(笑)」
またまたガハハと佐藤さん。
かくしてでき上がった“スプリットタン”の「ゆでスパタン」を、目を細めながら実食。口溶けのよさとやわらかさは、まさにゆでタンそのもの。長時間煮ることでランチョンミートの脂が適度に抜けるから、さっぱりしていて食べやすいのも魅力的だ。
「ゆでスパタンには、カベルネソーヴィニヨンやシラーなど、タンニン強めな赤ワインをガツンと合わせます。スパムがますます牛タンに思えてきますよ~」
いやあ、佐藤さん、さすがです!
ランチョンミート | 1缶(200g) |
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玉ねぎ | 1/2個 |
ローリエ | 4枚 |
塩 | ひとつまみ |
マスタード | 適量(練り辛子でも可) |
玉ねぎは2等分のくし形切りにする。
小鍋にランチョンミート、玉ねぎ、ローリエ、塩を入れ、たっぷりの水を加える。強火にかけ、沸騰したら弱火にし、1~3時間煮る。途中、煮汁が減ったら水を適宜足しながら煮る。
ランチョンミートは厚みを半分に切る。
長辺の両側面と短い辺の一方を写真のようにカットし、牛タンの形に整える。
器にランチョンミート、玉ねぎを盛り、煮汁をかけ、マスタードを添える。
1974年埼玉県生まれ。国内外のレストランを経て独立。ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ、「お惣菜と煎餅もんじゃさとう」「ポークビンダルー食べる副大統領」など5店舗の飲食店や、缶詰やレトルト食品などを販売するECサイト「さとう商店」を運営。趣味は家族でキャンプすること。晩酌酒はジムビームのハイボール、または黒霧島ロックの二択!
文:佐々木香織 撮影:伊藤菜々子