
連載のトップバッターは、ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ5店舗の飲食店を運営するほか、食の業界で縦横無尽に活躍する、佐藤幸二さん。4品目は、佐藤さんが絶賛する牡蠣の缶詰を使ったつまみです。
ポルトガル料理やもんじゃ焼き、カレーなどさまざまなジャンルの飲食店を都内で運営する佐藤幸二さん。独立前にはイタリアンレストランで働いていた。そこで毎日のように焼いていたのがじゃがいものガレットだ。
「店では、せん切りじゃがいもの間にヒラメのフィレを挟んだ『ヒラメのガレット』を提供していて。それを焼くのが僕の役目でした。じゃがいもには癖がないから、ヒラメだけでなく、肉だって野菜だって、何でも合うよね」
じゃがいもはどんな食材も受け止める懐の深さがある、と佐藤さん。缶詰も合わないわけがない。
悩んだ末、木の屋石巻水産謹製「牡蠣の燻製油漬け」でつくることに。
「ここの缶詰は何を食べても旨い!素材もいいし、調味液の配合も素晴らしいんです」
生地となるじゃがいもだが、ガレットに向くのは男爵やきたあかりなどでんぷんが多めの品種。でんぷんが糊のような働きをして、焼いたときにガレット全体がまとまりやすいからだ。じゃがいもに片栗粉をまぶしてから焼けば、さらに固まりやすくなる。
調理のポイントは、じゃがいもを焼き始めたらむやみにいじらず、弱火でじわじわ火を入れて焼き固めることと、フライパンに蓋をして蒸し焼き状態にし、中までしっかり火を通すこと。
牡蠣の燻製缶以外にも、
「コンビーフ缶×コンテ(チーズ)や、オイルサーディン缶×オニオンも、ぼくの好きな組み合わせ」と佐藤さん。家にある缶詰で新たなガレットを生み出すのも一興だ。
バターをたっぷり吸いこんだじゃがいもは、カリッカリの焼き目がたまらないおいしさ。ザクッと齧れば今度は、牡蠣の旨味や春菊のほろ苦さ、青々しい香りが代わるがわる現れて、舌を大いに楽しませてくれる。「サワークリームの酸味は、じゃがいも、牡蠣、春菊の個性を引き立てるバイプレイヤー」と佐藤さんは太鼓判を押す。
して、佐藤さん。お酒は何を合わせましょう?
「ビール、ハイボール、レモンサワー。何だっていいんじゃないかな(笑)。ワインならきりっとした酸が心地いいシャルドネだね」
食材も酒も種類を問わずがっちり受け止める、じゃがいもの偉大さよ。
いやあ、佐藤さん、さすがです!
牡蠣の燻製オイル缶 | 1缶(固形量60g) |
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じゃがいも | 250g |
春菊 | 1枝(15g) |
塩 | 小さじ1/4 |
片栗粉 | 小さじ1 |
シュレッドチーズ | 30g |
バター | 30g(食塩不使用) |
サワークリーム | 30g |
じゃがいもは皮をむいてスライサーで太めのせん切りにする。ボウルに入れて塩をふり、よくもんで余分な水気をしっかり搾り出す。
1のじゃがいもに片栗粉をふり、ムラなく和える。シュレッドチーズも加え、ざっと混ぜる。
牡蠣の燻製はざるに入れてオイルをきり、粒が大きければ食べやすい大きさにほぐす。春菊は幅1cmに切り、牡蠣と和える。
直径22~24cmのフライパンにバターを入れ、弱火にかける。バターが溶けてきたら2のじゃがいもの半量を丸く平らに広げる。その上に3の牡蠣と春菊をのせ、残りのじゃがいもをかぶせる。火加減を弱めの中火にし、フライ返しでギュウギュウ押さえて形を整える。蓋をして5分ほど焼く。
ガレットに焼き色がついたら、ひっくり返してさらに5分ほど焼き、フライパンに残ったバターをキッチンペーパーで拭く。ガレットを器に盛り、サワークリームをのせる。
1974年埼玉県生まれ。国内外のレストランを経て独立。ポルトガル料理店「クリスチアノ」をはじめ、「お惣菜と煎餅もんじゃさとう」「ポークビンダルー食べる副大統領」など5店舗の飲食店や、缶詰やレトルト食品などを販売するECサイト「さとう商店」を運営。趣味は家族でキャンプすること。晩酌酒はジムビームのハイボール、または黒霧島ロックの二択!
文:佐々木香織 撮影:伊藤菜々子